研究課題
本年度はまず、軟X線を照射したときに起こるATPの分子変化を、軟X線吸収スペクトルの変化から予測した。それによると、ATP薄膜に軟X線を照射すると、ATP分子中の糖部位のC-O結合切断が効率よく起ることが明らかになった。さらに、ATP溶液に対してγ線照射を段階的に行い、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)を用いた測定を行った。検出器としてすべての核酸分子を直接酸化検出することが可能なナノカーボン電極を配置した。γ線の照射量に応じた変化としては、リン酸基の加水分解によるATP量の減少が見られた。また、質量分析結果から、リン酸基の加水分解以外の分子変化を示唆する結果を得た。電気化学分析では、リン酸基の加水分解に伴うATP量の減少が見られたことに加え、5Gyのγ線を照射したATP試料のみ、未知ピークが観察され、質量分析と同様の分子変化が確認された。電気化学的反応によって検出された観点から、アデニン環構造の破壊が起きている可能性は低く、不飽和二重結合への水酸基の付加反応や、アミノ基の酸化反応が進行していることが推察された。上記の分析に加えて、ATPの生化学的な活性を評価するために、ATP溶液を様々な強度のγ線照射あるいはX線照射した後、ルシフェラーゼによるATP加水分解活性ならびに試験管内転写系を用いたRNA合成の基質としての活性の2点を調べた。その結果、放射線照射依存的なATP加水分解活性の低下が認められた。一方、RNA合成基質としての活性に明瞭な活性低下は認められなかった。これらの生化学実験の結果は、放射線照射によるATPの化学的変化がATPの生化学的活性の低下を導くことを示唆する。さらに、ATP受容体活性化能についてERK1/2活性化を指標に検討したところ、Tris溶解ATPの30Gy照射によりATP受容体活性化能が低下していることが明らかとなった。また5Gy照射では若干の増強効果が認められ、γ線照射によってATPの構造が変化している可能性が示唆された。
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