本研究では、環境化学物質が周産期の血液脳関門(Blood-Brain Barrier: BBB)をどの程度移行するか、また、BBBの構造・機能に変化を及ぼすことにより脳への影響が引き起こされる可能性があるかを検証するものである。本研究により、これまでのBBBを通過した環境化学物質が神経系細胞へ直接作用し影響を引き起こすという概念を踏まえ、周産期BBBを構成する細胞への環境化学物質の作用機序の解析を進め、環境化学物質の新たな作用概念の創出を目指す。 平成25年度においては、前年度において、BBBバリアー機能がBBB機能が構築した後のダイオキシ ン曝露ではなく、BBB機能構築開始と同時の曝露開始により用量依存的なBBBの機能低下が認められたことから、この機能変化について脳血管内皮細胞、周細胞、ギャップジャンクション構造に関わるタンパクの発現の変化を検証した。現在のところ、いくつかのタンパクにおいて、発現の減少傾向などの変化は認めているが、更なる検証が必要である。また、BBBの透過性の検証のため、分子量の異なる各トレーサー(0.5kDaビオチン、3kDaビオチン標識デキストラン、70kDaビオチン標識デキストラン)を用いて、透過度の検証を行った。いずれのトレーサーに置いてもダイオキシンの曝露による有為な変化は認められなかった。 今後、これまでの研究結果をとりまとめ、発表を行っていくと同時に、さらに実験動物を使った検証ならびに脳発達に関わる因子のBBB透過性などの機能解析を進めていく予定である。また、ダイオキシンのみならず、ポリ塩素化ビフェニル、ニコチン、ネオニコチノイドといった化学物質の影響についても検証を始めている。
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