本研究では、杉材の組織異方性を考慮し、且つ「水分と熱の並び流れ」の原理に従った低温乾燥特性を実験的・理論的に検討した。杉の板材を一定の温度勾配の中で一端から乾燥させ、木材組織方向および水分の移動方向によって、乾燥速度と乾燥収縮が大きく変化することを明らかにした。水分と熱を同じ方向に移動させると、含水率および収縮率の場所による差異の小さい乾燥が可能になることを見出すとともに、その結果を蒸発と凝縮を伴う水蒸気の拡散モデルによって再現することに成功した。最後に乾燥後の杉材中の精油成分の含有率が乾燥温度で異なることを示した。
|