研究概要 |
本研究では, 膜分離メタン発酵法を下水処理に適用させるための知見の収集を目的として, ラボスケールの反応槽を用いて室温条件で2種類の人工下水の連続処理実験を行い, 以下のような知見が得られた。 (1) HRT 12 hにおいて, 溶解性人工廃水リアクター及びSS含有人工廃水リアクターの膜透過水のCOD濃度, BOD濃度はそれぞれ34, 11 mg/L, 19, 8 mg/Lを示し, 室温条件で高い処理性能を示した。 (2) 溶解性人工廃水リアクターでの投入COD 100 %に対して, 膜透過水6%, メタンガス72%, 汚泥15%となった。またSS含有人工廃水リアクターに関しては, 膜透過水5%, メタンガス 65%, 汚泥 17%であった。従来の嫌気性処理と比較して, 高いメタン収率であった。 (3) 下水1万m3を処理した場合, 溶解性リアクターにおいて, バイオガスが1510 m3 (メタン, 80%) 生成され, 汚泥が0.48 t-DS発生することが示された。SS含有リアクターに関しては, バイオガスが1450 m3 (メタン, 75%) 生成され, 汚泥が0.53 t-DS発生することが示された。また, 従来の下水処理プロセスと比較して, SAMBRは良好な水質, 効率の良いエネルギー回収, 汚泥生成量の削減が同時に実現する可能性が示唆された。 (4) 古細菌の群集構造解析において, 両方ともMethanosaetaとMethanoregulaが優占した。真正細菌の群集構造解析において, 門レベルでunclassifiedである細菌が全クローンの19.2%, 28.3%を占めた。また, Rhodocyclus, Cytophaga, Pseudomonas等の一般的な好気性処理でも確認された細菌が検出された。
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