捨てられている低品位の熱エネルギーを熱として再利用することが、今後のエネルギー問題を解決する上で重要となる。潜熱蓄熱材は蓄熱温度域が狭域であり、一般家庭の暖房や給湯などに使うには好都合であるが、液体と固体の相変化を用いるために、熱の発生する場所から消費する場所へ輸送することは困難である。特に一般家庭などの排熱や太陽熱は家外部で生じるため、この熱を家内部まで導くには、輸送する必要があり、固体状態ではその妨げとなる。よって、熱の発生と消費を空間的、時間的につなぐための流動性高性能蓄熱材料の開発が望まれている。本研究では潜熱蓄熱材に流動性を付加させるために、以下の3つの潜熱蓄熱材について実験を行った。 (1)高濃度スラリー潜熱蓄熱材の開発では、表面活性剤の添加により微細な結晶を作ることで、高濃度のスラリーの流動化を試みた。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を約1wt%添加すると、Na2SO4濃度が25wt%の濃厚な水溶液においても固化時に流動が可能であった。また、温度変化はSDS添加なしとほぼ同じであった。(2)硝酸マグネシウム6水和物は乾燥すると、自己の水和水によって潮解して液滴になることが確認できた。よって、液→固→液の相変化は確認できたが、乾燥状態での液体はかなり粘性が高く、また、表面が無水和物の固体の膜を形成してしまうため、流動化は困難であった。(3)吸収式ヒートポンプの蓄熱材は低湿度側では吸水性が高いが高湿度側ではあまり多くの水を含めない。そこで、一旦潮解すると多量な水を含有できる食塩を用いて、有機物を添加することで固化点をコントロールし、低湿度でも流動可能な蓄熱材の開発を行った。有機物を添加すると固化点は低下するものの、多量の有機物を入れないとその効果は期待できなかった。また、多量に添加すると有機物は吸水性が低いため、トータルでは吸水性の低い吸収剤となってしまった。
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