研究課題/領域番号 |
24651071
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大友 順一郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (90322065)
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キーワード | 省エネルギー技術 / 蓄電池 |
研究概要 |
高イオン伝導率を有する固体電解質材料を開発し、中温域で作動する従来の作動原理とは異なる金属-空気二次電池を提案することを目的として検討を行った。今年度は、500℃付近の中温域におけるプロトン伝導体として、タングステン酸ランタンに着目し、材料合成とプロトン伝導機構の検討を行った。導電率測定の結果から、Aサイトドープは導電率を減少させる一方、Bサイトドープにより導電率の改善が観測された。量子化学計算から、Aサイト周辺経路でプロトンの拡散障壁が最も小さくなることが確認された。 さらに、酸化物イオン伝導型金属空気電池およびプロトン伝導型金属空気電池を作製し、それぞれ放電反応および充電反応の進行を観測した。活物質にはビスマスを用いた。酸化物イオン伝導型金属空気電池については、放電時の酸化物イオンの直接反応が示唆された。一方、プロトン伝導型金属空気電池については、水素生成を経由する2段階の反応の進行が示唆された。放電反応および充電反応の両者において、酸化ビスマスの構造相転移による電気伝導率の変化が、反応過電圧の低減に大きく寄与することが示唆された。以上述べたように、電解質材料開発からデバイスの作動までの検討を行った。次年度以降は、酸化還元反応機構の詳細な検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高イオン伝導率を有する固体電解質材料の開発について、今年度はプロトン伝導性タングステン酸ランタンの材料開発において、電気化学測定と計算機科学の両面から検討することで、高性能な材料開発の指針を得ることができた。また、酸化物イオン伝導型金属空気電池とプロトン伝導型金属空気電池を作製し、放電反応および充電反応の進行を実証した。金属空気電池デバイスの電気化学測定を通じて、電極反応過程の過電圧への寄与率も評価することができ、金属空気電池作動時の有効な情報を得ることができた。得られた基礎的な知見は、提案する電池デバイスシステムの設計上、必要不可欠な情報であり、それらのことを勘案すると、本研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
高イオン伝導率を有する固体電解質材料の合成を引き続き行う予定である。また、電極界面の輸送現象や表面反応機構の解明に向けた検討を行う。すなわち、金属酸化物の酸化還元反応について、界面近傍の局所的な電気化学測定を実施することで、界面輸送現象について詳細な検討を行う予定である。また、酸化過程については、今年度観測を行ってきた直接酸化過程に加えて、間接モードとなる水蒸気による還元金属酸化物の再酸化、すなわちスチームアイアン反応による水素生成についても検討を行う予定である。以上の結果を総括し、システム解析に反映させることで、充放電効率の評価を行う。
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