高イオン伝導率を有する固体電解質材料を開発し、中温域で作動する従来の作動原理とは異なる金属-空気二次電池を提案することを目的として検討を行った。昨年度までに、酸化物イオン伝導型金属空気電池およびプロトン伝導型金属空気電池を作製し、放電反応および充電反応の進行を観測した。最終年度(平成26年度)は、構成部材(電解質、電極)について、最適化を含めて検討を行った。 電解質については、500℃付近の中温域におけるプロトン伝導体として、酸化チタン-リン酸ガラス-セラミックスについて検討を行った。ゾルゲル法に基づき、各種合成条件を最適化することで均一な薄膜を作製することに成功した。また、ガラス-セラミックス化の処理を施すことで試料内部のプロトン濃度が高くなり導電率に寄与した可能性が示された。 さらに、放電過程の電極反応の最適化を目指して、水蒸気による還元鉄の再酸化反応(水素生成反応)の反応速度定数の担体依存性について検討を行った。電極材料として多孔質金属酸化物複合粒子を用いた。金属酸化物として酸化鉄を用い、担体材料には酸化物イオン伝導体であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)および混合伝導体である鉄ドープカルシウムチタネート(CTFO)を用いた。YSZと比較してCTFOによる酸化反応の加速効果が大きいことが明らかになった。CTFOは酸化雰囲気下で電気伝導(ホール伝導性)を示すことから、還元鉄の水蒸気による酸化反応では、担体の酸化物イオン伝導性に加え電気伝導性の影響を受けることが示唆された。担体の酸化物イオン・電子の輸送特性が金属酸化物の反応性に対して強く影響を与えることが実験的に示され、界面における輸送現象の把握が髙活性な電極設計に対して重要であることが示された。
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