研究課題/領域番号 |
24651072
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
高橋 美穂(田中美穂) 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (30236640)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ケイ酸 / ストロンチウム / セシウム / 錯体 |
研究概要 |
淡水でケイ酸を天然の水の飽和量まで溶解できるイネ用の肥料のケイ酸を用い、田畑にある90Srや137Csの除去を試みた。 家庭園芸用培養土を1mmのメッシュにかけ、1週間110℃で乾燥させ、1gを使用した。これに全量として10-5gのセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)を別々に吸着させ、振とうさせ、Cs とSrの定量とケイ酸とCs とSrの錯形成について調べた。 土にはSr、Csが、ブランクとして、50ppb、1.8ppb含まれていることがわかった。 土にSrを吸着させ、水で1-14日間振とうすると平均109%、ケイ酸水溶液で平均104%のSrが回収された。このことから、土壌に元々含まれているSrも抽出されたことがわかった。このときの水溶液は環境に優しいpH 6-7で生じることも確認した。FAB-MSにより、土から抽出されたケイ酸水溶液には、ストロンチウムが存在していることを確認した。これにより、土に含まれるケイ酸を利用することにより、土壌に負荷なく、土壌からSrをほぼ100%回収できることがわかった。 土にCsを吸着させて、水またはケイ酸水溶液で、1-14日間振とうし、Csを回収した。このときに土壌からの溶出溶液はpH 6-7であった。水のみでは平均3.8%、ケイ酸水溶液では0.96%しか回収できなかった。ケイ酸に硝酸アルミニウムを加えた溶液では、pH 4-9において、Csの回収率が4.3%に上がった。Csに関してはケイ酸が抽出を抑えることもわかった。FAB-MSから、Csとケイ酸の錯体のピークは非常に小さかった。ケイ酸と錯形成しにくいことがCsの土壌からの回収を悪くさせている原因と思われる。また、ケイ酸が土壌中のCsを溶出しないので、「Csの固定剤」としての役割を果たせるのではないかと考える。今後、環境にやさしいCsの回収に関して、さらなる情報を得る必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
土壌にストロンチウムを加え、環境に優しいpH領域(pH 6-7)において水またはケイ酸水溶液の溶出によって、ストロンチウム(Sr)は土壌から100%(100%に土壌にもともと含まれているSrも加えて)抽出されることが明らかにした。このことは、ケイ酸とSrが錯形成し、土壌に吸着しているSrイオンが「イオン交換サイトからはがされて」溶出していると考えられる。このSrの土壌からの溶出に関しては、研究目的および本研究者の予測と一致しており、非常に良い研究成果を得られたと考えており、達成度は満足のいくものであった。 一方、セシウム(Cs)に関しては、土壌からの水による抽出が水のみでは平均3.8%、ケイ酸水溶液では0.96%しか回収できなかった。また、他の研究者らによって、さまざまな有機酸による抽出が報告されているが、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、酒石酸、酢酸すべて1mM水溶液による抽出では、土壌からの抽出溶液はpH5-6であり、Csの抽出は5-6%であった。土壌から抽出した有機酸による抽出でも、pH 5-6の範囲で抽出を行ったが、回収率は、5-6%であった。さらに、pH を変化させ、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3)によって抽出を試みたところ、4-7%の回収率であった。このことから、Csの場合には土壌からの溶出を考えるので、あれば、さらに、抽出させる酸を考察する必要がある。ケイ酸によって、土壌からのCsの抽出を阻害できることがわかった。例えばわき水を飲料水として利用する森林域においては、Csを土壌にとどめることを求められているので、これらを利用することも可能であると考える。 この点から、研究は当初の予定通りに遂行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
淡水でケイ酸を天然の水の飽和量まで溶解できるイネ用の肥料のケイ酸を用い、田畑にある90Srや137Csの除去を試みた。 家庭園芸用培養土を1mmのメッシュにかけ、1週間110℃で乾燥させ、1gを使用した。これに全量として10-5gのセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)を別々に吸着させ、振とうさせ、Cs とSrの定量とケイ酸とCs とSrの錯形成について調べた。 土にはSr、Csが、ブランクとして、50ppb、1.8ppb含まれていることがわかった。 土にSrを吸着させ、水で1-14日間振とうすると平均109%、ケイ酸水溶液で平均104%のSrが回収された。このことから、土壌に元々含まれているSrも抽出されたことがわかった。このときの水溶液は環境に優しいpH 6-7で生じることも確認した。FAB-MSにより、土から抽出されたケイ酸水溶液には、ストロンチウムが存在していることを確認した。これにより、土に含まれるケイ酸を利用することにより、土壌に負荷なく、土壌からSrをほぼ100%回収できることがわかった。 土にCsを吸着させて、水またはケイ酸水溶液で、1-14日間振とうし、Csを回収した。このときに土壌からの溶出溶液はpH 6-7であった。水のみでは平均3.8%、ケイ酸水溶液では0.96%しか回収できなかった。ケイ酸に硝酸アルミニウムを加えた溶液では、pH 4-9において、Csの回収率が4.3%に上がった。Csに関してはケイ酸が抽出を抑えることもわかった。FAB-MSから、Csとケイ酸の錯体のピークは非常に小さかった。ケイ酸と錯形成しにくいことがCsの土壌からの回収を悪くさせている原因と思われる。また、ケイ酸が土壌中のCsを溶出しないので、「Csの固定剤」としての役割を果たせるのではないかと考える。今後、環境にやさしいCsの回収に関して、さらなる情報を得る必要があると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の土壌を使用したケイ酸を主として、SrやCsの溶出を検討するための高純度試薬、特殊実験器具などの消耗品を購入する。また、FAB-MSを使用するための、消耗品の購入、ESI-MSによる測定のための窒素ガスや消耗部品などを購入する。SrやCsを定量するため、ICP-MSを使用する。この機器の使用に関するアルゴンガスや装置を使用するためのメンテナンス部品などを購入する。 また国際学会や国内学会でSrの溶出挙動、Csの固定剤としての使用について、発表し、報告する。旅費として、今年度交付額1600千円の20%を予定している。 「設備備品費、人件費・謝金」は、予定していない。 また、研究経費の90%を占めるものはない。
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