土壌中に存在するセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)の溶解挙動が異なり、Srはケイ酸と[SiO3(OH)Sr]-という安定な錯体を形成し、土壌から抽出されることは明らかになった。しかし、Csに関しては、pH6-7による1mMケイ酸水溶液20mLによっては、土壌1gに10-5g添加したCs全体の1%しか回収されず、水のみ、他の有機酸(クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、酒石酸、酢酸)1mM水溶液による抽出では、Csの抽出は5-6%であった。さらにケイ酸水溶液に硝酸アルミニウムを加えることでCsの回収率が4%にもどることを示した。以上の結果から、Csは土壌成分のケイ酸となんらかの相互作用をして「土壌に接着する」効果を持つのではないかと考えた。 シリカゲルの固体をCsClとSrCl2水溶液と24時間、振とうさせた。この場合にはシリカゲルの加水分解過程とケイ酸の水溶液の平衡を考える必要がある。そこで、ケイ酸の1量体から成る溶液として、テトラエトキシオルトケイ酸(TEOS)を加水分解して、ケイ素1mMの水溶液を調製し、ケイ酸とSr、CsについてFAB-MSおよびケイ酸の定量から検討した。シリカゲルの溶解とTEOSの結果から、Srはケイ酸と[SiO2(OH)2Cs]-を形成した。また、4、5量体として環状と直鎖状の分子が検出された。しかし、Csでは、[SiO2(OH)2Cs]-は微少なピークで検出された。加えて、4、5量体として環状と直鎖状の分子が顕著に検出された。特に、環状の4量体がCsでは相対的に多かった。シリカゲルを塩溶液で加水分解させ溶解した時だけでなく、TEOS溶液から充分平衡に至った時にも4,5量体が多く存在した。したがって、CsはSrよりもケイ酸との錯形成能が劣るだけでなく、溶液平衡において、4量体、5量体を形成しやすいこともあきらかになり、この多量体の生成が実質的なケイ酸とCsの錯形成に使用できるケイ酸の量を減らし、土壌中のケイ酸などに吸着を促進させるのではないかと考えた。
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