研究課題/領域番号 |
24651076
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 公益財団法人名古屋産業科学研究所 |
研究代表者 |
椿 淳一郎 公益財団法人名古屋産業科学研究所, その他部局等, 研究員 (50109295)
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研究分担者 |
森 隆昌 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20345929)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スラリー / 堆積層 / 負圧 |
研究概要 |
微粒子堆積層の負圧発生のメカニズムを解明すること,並びに,負圧を利用した吸水システムを開発することを目的として本年度は,装置構造やスラリーの堆積層の状態が負圧の大きさやその継続性に及ぼす影響を検討し,吸水実験に応用した. 試料粉体にアルミナ粒子(AES11E,住友化学,平均粒子径0.48 µm),分散媒に蒸留水,pH調整剤として塩酸を使用し,pH 4.3程度(分散系)となるように添加し,粒子濃度40 vol%になるように調整した.次に試料粉体と蒸留水,塩酸の所定量を超音波バス中で10分間攪拌し,その後,ボールミル(回転数 120 rpm)で1時間混合した.混合後,ふるいでスラリーとボールを分離し,真空ポンプを用いて5分間真空脱泡し,pHを測定した. 試料容器を複数段に組み立てて多段装置を作った.試料容器の間には,多孔板,MF,多孔板をはさみ,調製したスラリーを,単段装置はフィルター面から90 mmの高さまで投入した.多段装置も各試料容器をスラリーで満たし,90 mmの高さまで投入した.蒸発を防ぐため流動パラフィンでスラリーの気液界面を覆い,伝達管に接するフィルター面にかかる静水圧の経時変化を測定した.静水圧の経時変化の測定結果から,スラリーを多段に組み立てることで負圧が増大することが分かった.スラリー中粒子が沈降して膜上に堆積し,底部の粒子濃度が大きくなり,反対にスラリー上部の粒子濃度は小さくなる.多段装置の場合,粒子濃度の大きい底部と小さい上部がMFを介して接触することにより,負圧が単段装置と比較して大きくなったと考えられる.このようにスラリーを多段化することで負圧を増大でき,吸水の揚程を増大できる. またスラリーの堆積層の負圧は,堆積層が流動性のある状態を保っているときに発生していることが明らかとなり,その主要因が浮遊粒子群の浸透圧であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スラリーの沈降堆積層が作り出す負圧に関して種々の実験を行った結果,その発生メカニズムが,堆積層内の粒子が浮遊していることにより発生する浸透圧によるものではないかといういくつかの実験結果を得ることができた.当初堆積層の負圧はそのメカニズムの解明が非常に困難であると思われていたため,系統的に実験パラメータをふって負圧を測定することによってのみしか,負圧を最大化し,応用に結びつけていく方法はないと考えていたため,負圧発生メカニズムの推定に至ったことは今後の研究を加速する要因になり得ると考える.
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今後の研究の推進方策 |
負圧を最大化するための実験として,系統的に実験パラメータをふっていくのではなく,今年度の成果を生かして,浮遊粒子層の浸透圧が大きくなるような実験パラメータをある程度絞って,実験を進めていく.粒子の分散状態,一次粒子径,粒子濃度に特に着目して,最も効果的に負圧を発生させることができる条件を探索する. 同時に吸水実験も行っていく,吸水実験においてポイントとなる吸水の流束はもちろん,継続時間を重要な評価項目と位置づけ,長期間にわたって吸水データを取得する.得られた吸水量から考えられる応用先を検討していく. スラリーを多段に組んだ装置入れることによっても負圧は増大したため,装置条件についても予備検討を始める.負圧発生に影響を及ぼす装置因子を解明するために,系統的に装置パラメータをふって負圧測定を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
負圧測定実験,吸水実験に必要な試薬類を購入する.負圧測定装置,吸水量測定装置をチェックし,不具合が出ている物については新規に購入し交換する.さらに装置条件の影響を検討するため,種々条件でサイズや材質,形状の異なるスラリー容器を試作する.
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