研究課題/領域番号 |
24651076
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研究機関 | 公益財団法人名古屋産業科学研究所 |
研究代表者 |
椿 淳一郎 公益財団法人名古屋産業科学研究所, その他部局等, 研究員 (50109295)
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研究分担者 |
森 隆昌 法政大学, 生命科学部, 准教授 (20345929)
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キーワード | スラリー / 沈降濃縮層 / 負圧 / 吸水 |
研究概要 |
スラリーを重力場で静置して形成された沈降濃縮層が作り出す負圧及びそれを利用した吸水システム構築の可能性を検討した.負圧発生現象に関しては発生メカニズムの解明を目指して,装置構成が負圧の発生及び大きさに及ぼす影響を検討した.スラリーの沈降方向に平行,垂直に半透膜を設置したときに,負圧の大きさに違いが生じるのかを検討した.その結果粒子径が比較的小さい,一次粒子径が数十ナノメートル以下のスラリー及び溶液では,膜の報告に関係なく負圧(浸透圧)の値はほぼ一定となったのに対して,一次粒子径が数百ナノメートル(サブミクロンオーダー)のスラリーでは,膜をスラリーの沈降方向に垂直に入れたときに発生する負圧の大きさの方が大きくなることが分かった.これは膜の直情に沈降濃縮された粒子層が形成されたために,局所的に粒子濃度が極めて高い領域が形成され,その結果,全体の見かけ粒子濃度から想定される負圧の値(膜をスラリーの沈降方向に平行に入れた場合)よりも大きな負圧が観察されたものと考えられる.したがって負圧の大きさをできる限り大きくして,吸水システムとして利用していくことを検討する上では,膜はスラリーの沈降方向に直交するようにいれ,膜の上部に沈降濃縮層が形成されるようにすることが有効であると考えられる.沈降濃縮層は完全には固化していない(膜や壁面に粒子が固定化されておらず拡散できる状態にある)ことが重要で,粒子間反発力が十分に大きくない系では,長時間スラリーを静置しておくと,粒子が衝突を繰り返す事で接触・固化してしまう場合が有り,長期間の吸水には利用できないということが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沈降濃縮層を形成することが負圧の発生もしくは負圧の大きさに影響を及ぼすのかどうかについて,半透膜をスラリーの沈降方向に平行,垂直に入れた実験を行い,比較することができた.これによって,沈降濃縮層が形成されることに重要な意味があり,負圧の絶対値に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった.また沈降濃縮層についても,粒子が完全に固化したいわゆる堆積層では負圧発生には効果がなく,粒子が強い静電反発力で粒子間距離が極めて短い状況でも完全には接触・固化せずに拡散できる状態を保っていることが重要であることもわかった.これらは当初の計画のメカニズムの推定に直結する結果で有り,計画はおおむね順調ではないかと考える.
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今後の研究の推進方策 |
スラリーの負圧測定結果と吸水速度,量の測定結果を詳細に比較し,本現象のメカニズムの解明と吸水を応用するための基礎実験を引き続き行っていく.負圧発生に関しては半透膜をスラリーの沈降方向に垂直に入れた測定装置を使用して,さらに詳細にスラリーの物性が負圧発生現象に影響するのかを検討する.スラリーの物性としては,粒子の種類や溶媒の密度,粘度を引き続き検討していく.吸水実験では,吸水速度の向上に資する実験パラメータを特定し,吸水速度の更なる向上を目指すと共に,吸水の継続時間についても検討していく.
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