昨年度まではCeO2-ZrO2格子酸素とCOの反応挙動を解析し、ガス成分であるCOの酸化に格子酸素が直接関与すること、格子酸素の放出特性がCO酸化活性と相関することを見出した。今年度は、格子酸素が関与する反応のための触媒設計につながる知見を得ることを目的として、複数の方法(共沈法、含浸法、析出沈殿法)で調製したCeO2-ZrO2について物理化学的特性と固体成分であるcarbon black(CB)との反応性を評価・解析した。XRDおよびTEM観察より、共沈法触媒では10nm程度のCeO2-ZrO2複合酸化物の粒子から構成されていること、含浸法触媒ではZrO2上に10~15nm程度のCeO2粒子が分散していること、析出沈殿法触媒ではCeO2粒子とZrO2粒子が別々に存在していることがわかった。まずガス成分である水素と格子酸素の反応性を評価したところ、共沈法触媒の格子酸素が最も低温で水素と反応できることがわかり、CeO2-ZrO2格子酸素の反応性は構造や粒子形状により異なることがわかった。一方、固体成分であるCBとの反応性は水素との反応性と大きく異なり、含浸法触媒が最も低温でCBを酸化でき、共沈法触媒の格子酸素の反応性が最も低いことがわかった。その要因を18O2同位体ガスを用いたCO2同位体分布を観測することで検討した。その結果、含浸法触媒では気相O2がCeO2格子内に取り込まれて反応していることを示すC16O18Oの生成が顕著に見られ、反応時間経過とともにその生成量は増加した。一方、共沈法触媒ではC16O18Oの生成量は僅かでほとんどがC16O2であった。以上の結果より、共沈法触媒ではガス成分に対して、一方、含浸法触媒では固体成分に対して高い反応性を示すことが明らかとなり、触媒反応に応じた触媒設計指針のための知見を明らかにすることができた。
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