研究課題/領域番号 |
24651078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
倉敷 哲生 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30294028)
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研究分担者 |
森 裕章 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10294026)
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キーワード | 環境材料 / バイオマス / 繊維廃材 / 複合材料 |
研究概要 |
リサイクル率がわずか8%である繊維廃材を再生資源として活用し,環境負荷を低減するバイオマス複合材料の開発が本研究目的である.本年度は昨年度に引き続き,繊維廃材と樹脂との界面結合を向上させるべく,無水マレイン酸による表面処理を施した熱可塑性繊維(ポリプロピレン繊維)を界面改質材として利用し,繊維廃材との複合化を試みた.前年度の第1次試験片での結果を基に,無水マレイン酸の有無による第2次試験片を作成し,層間せん断試験,微小圧縮試験,三点曲げ試験を実施した.層間せん断強度は無水マレイン酸含有試験片の方が向上しており,試験後の試験片の断面観察の結果,ポリプロピレン繊維により繊維同士が接着し集合体として存在している傾向が見受けられた.また,微小圧縮試験の結果より,無水マレイン酸を付与することで圧縮強度および縮約弾性係数の変動係数が低減している.これは繊維間同士の界面接着性が向上し,圧子の押し込みをより大きな面で受けることによりばらつきが低減したと考える. さらに,三点曲げ試験の結果より,得られた曲げ強度は無水マレイン酸未含有試験片と比較して1.66倍に向上している.また,曲げ弾性率も2.09倍に向上することが分かった.さらに,無水マレイン酸を付与することで変動係数も低減している.繊維間の界面特性が向上しバラツキが抑えられたためと考える.また,提案する試験片は木材と同等の曲げ特性を得ることが確認でき,曲げ負荷を与えた際に最外層の割れなどは生じていない.以上より,提案する故繊維複合材料は木質代替材料への用途展開も期待できると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度に成功した第一次試験片の成果に基づき,繊維廃材と樹脂との複合化において重要となる界面結合の問題の解決を図るため,無水マレイン酸の配合量を変えた第二次試験片を作成し,マクロな強度特性評価の観点からの三点曲げ試験および試験後の断面観察を実施した.さらに,ミクロな力学的特性評価の観点から微小圧縮試験および層間せん断試験を実施し,ポリプロピレン繊維の界面特性の影響と力学的特性のばらつき(変動係数)の評価を実施した.得られた結果はこれまでの2年間の成果として,先行研究と比べても繊維廃材を活用した木質代替材としてはチャンピオンデータが得られており,研究としておおむね順調に進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として,木質代替材としての適用を図るため,提案する材料の燃焼実験を行い,難燃性特性の評価と行う.さらに,無水マレイン酸の配合量を変えた積層構造(サンドイッチ構造)の提案と,その力学的特性評価を実施する.無水マレイン酸の界面処理材の含有量の影響も考慮し,これらの材料選択を実験のみによる評価ではなく,数値解析シミュレーションを行うことにより提案する複合材の設計を行う.さらに,生分解性樹脂の繊維化(ナノファイバー化)にも試み,繊維廃材と樹脂との界面結合のさらなる向上を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画の予定通り研究は進んでいる.これらの成果について広く論文投稿を行うことと学会発表を行い関連研究者との意見交換を進め研究を推進していくことを計画している.当該年度での学会発表の申し込みに間に合わなかったため,次年度の研究費として使用し,学会発表を行う.さらに,数値解析により,無水マレイン酸の配合量を変えた積層構成に関する評価を行うことを予定していたが,準備・検討段階で留まったため,次年度に持越し,そのための計算機の購入を計画する. 主たる使用計画の内容は旅費(学会参加費)である.論文投稿を行うと共に,無水マレイン酸の配合量を変えた積層構成に関する評価を行うための備品(数値解析機)の購入を予定している.
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