リサイクル率がわずか8%である繊維廃材を再生資源として活用し,環境負荷を低減するバイオマス複合材料の開発が本研究目的である.前年度までに,繊維廃材と生分解性樹脂(セラック樹脂)を用いた複合材を作成し,これを内部層とし,最外層に竹資源として竹繊維の不織布シートで強化を図った複合材を提案し,三点曲げ試験による評価を行い,その有効性を示してきた.ただし,曲げ負荷時の層間剥離や圧子部近傍での圧壊が見られ,さらなる物性向上に向けた課題が残された.これらの点から,厚さ方向に均質な強化が可能となるよう,繊維廃材と樹脂との界面結合を向上させるべく,無水マレイン酸の配合量を変えた表面処理を施した熱可塑性繊維(ポリプロピレン繊維)を界面改質材として利用し,繊維廃材との複合化を試みた.その結果,無水マレイン酸を添加することで繊維間が接着され,力学的特性が向上することが分かった.さらに,繊維廃材から作製した故繊維複合材料に2.0wt%未満の無水マレイン酸を添加することで,木材と同等の曲げ特性を有することも示した. 無水マレイン酸量が増すことにより曲げ特性向上となる一方,コスト増も招くこととなる.そこで,無水マレイン酸を含む層を最外層に,含まない層を内部層としたサンドイッチ構造を提案し,フローリング材への適用のために,日本農林規格の条件に基づいた有限要素解析を実施し,試験片厚さと曲げ特性の関係を評価した.その結果,フローリング材として適用条件を満たす構造を見出した. さらなる界面特性向上に向けて,セラック樹脂のナノファイバー化を考え,その創製条件の検討を行った.セラックを溶質とし,高分子材を溶媒とした溶液の混合条件ならびにエレクトロスピニングによる紡糸条件の検討を行い,今後の研究の礎となる知見も得た.
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