研究課題/領域番号 |
24651079
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
惣田 訓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322176)
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研究分担者 |
池 道彦 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222856)
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キーワード | バナジウム / 微生物 / レアメタル / 資源回収 |
研究概要 |
水環境中で5価のバナジウム(V(V))を4価(V(IV))へ還元し、沈殿を形成する微生物の存在が確認されている。しかし、微生物を用いたバナジウム回収は新しい試みであり、その効率に影響を及ぼす要因には不明な点が多い。そこで、2種類のバナジン酸還元細菌を用い、バナジウムの沈殿形成に及ぼす培地成分の影響を解明することを目的とした。 本研究室で単離したCitrobacter属またはKluyvera属に類縁のV4株、ならびにバナジン酸還元細菌として報告されているShewanella oneidensis MR-1を各試験に供した。無機塩培地にに酵母エキスおよび乳酸ナトリウムを添加したL-BSM培地、グリセリンを添加したG-BSM培地、コーンスティープリカーを添加したC-BSM培地、モラセスを添加したM-BSM培地を用意した。また、HEPESと酵母エキスを含む溶液に乳酸ナトリウムを添加したL-HEPES培地、LB培地、TSB培地、および合成下水培地を用意した。これらの培地にNaVO3を100 μMとなるように添加した後、各菌体を植菌し、嫌気条件で静置培養(28℃)した。 両菌株による還元により、すべての培地において、液相のV(V)濃度が7日間で90 %以上減少した。一方、液相のV(V)が除去されても、必ずしも沈殿物は生じなかった。すなわち、V(IV)が主成分であると考えられる水溶性バナジウムが残存する場合がみられた。乳酸ナトリウムを炭素源とした培地(L-HEPES、L-BSM)では、MR-1株を用いた場合でのみ、顕著な沈殿が形成され、バナジウムが回収できた。両菌株に共通して、 SolubleV濃度の減少率と初期TOC濃度との間には、負の相関があった。TOC濃度の高いLB培地やTSB培地ではバナジウムの沈殿が生成されず、TOC濃度の低いCSL、モラセス、グリセリンを炭素源とした培地(C-BSM、M-BSM G-BSM)、および合成下水培地では、バナジウムを含有した沈殿の生成が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バナジウムを還元し、沈殿を形成するCitrobacter属またはKluyvera属に類縁のV4株を分離することができ、目的が大きく達成された。ただし、その能力は既知のShewanella oneidensis MR-1と同程度であり、その還元と沈殿のメカニズムの解明が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
水環境中からの微生物によるバナジウムの回収は、培地中の有機炭素の影響を受けることが明らかとなった。バナジウムを含有する沈殿物の生成は、ほとんどの場合V4株よりもMR-1株の方が優れていたが、両菌株の形成するバナジウム含有物の形状が異なった。バナジウム回収プロセスの構築を目的とし、還元と吸着機構を別途に評価するなど、様々な視点から回収特性の解明を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
微生物の分離が速やかに行えたため、バナジウムの分析に必要な物品が、予定より少なく済んだため。 分離した微生物の特徴づけのため、バナジウムの濃度を水相だけでなく、固相のものも分析し、物質収支の裏付けの重点化に充てる。
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