研究課題
生物学的脱窒法では、硝化と脱窒の2工程によりアンモニア態窒素を無害な窒素に変換する。しかし、硝化反応では好気的環境、脱窒反応では嫌気的環境が要求されるため、必然的に2つの反応槽が必要となる。自然界に形成されるバイオフィルムの上部層は好気状態、下部層は嫌気状態となっている。これは、一つのバイオフィルム内に異なる環境を創出できることを意味している。本研究では、コロイド科学の技法を駆使することで、自然界のバイオフィルムを模倣した硝化・脱窒菌の複合バイオフィルムを人為的に設計することを目的とした。平成24年度は、脱窒菌の担体上へのバイオフィルム形成について検討を行った。脱窒菌としてPseudomonas denitrificans、Paracoccus denitrificans、Bacillus firmus、Alcaligenes sp.、Pseudomonas fluorescensの5種類、菌体固定化担体としてポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン、ポリスチレン、正帯電性ガラス、アクリル、負帯電性ガラスの7種類を用いて、生理食塩水下で菌体の付着実験を行ったところ、菌体の接触角の実測値から求めた付着による自由エネルギー変化と固定化担体に付着した菌体数との間には正の相関関係が認められ、菌体の付着による自由エネルギー変化は担体上のバイオフィルム形成の指標として利用できることが分かった。次に、担体上への菌体の付着率の高かったポリエチレンとPseudomonas denitrificansの組み合わせで、バイオフィルムを形成させたところ、約2日で厚み約15 μmの緻密なバイオフィルムを形成できることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
脱窒菌の表面張力を実測し、担体への付着による自由エネルギー変化を計算することで、バイオフィルムが形成され易い条件選定を完了した。課題として、形成した脱窒菌のバイオフィルムによる硝酸性イオンの脱窒速度試験が挙げられる。
脱窒菌と脱窒菌の複合バイオフィルムを人為的に作成し、共焦点レーザー顕微鏡を用いてバイオフィルムの形成過程を三次元解析するともに、硝化・脱窒一体型処理槽の実証試験をラボスケールで行う。
平成24年度3月に発注した物品の納品が4月にずれ込んだため、次年度使用額333,406円が生じた。また、翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は、物品費1,533,406円、旅費300,000円、人件費100,000円、その他100,000円の合計2,033,406円である。
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粉体工学会誌
巻: 49巻 ページ: 883~888
Adv. Powder Technol.
巻: VOL.23 ページ: 532~537
10.1016/j.apt.2012.05.003