本年度は、2台の一槽型MFCを直列に接続する事で多槽化構造を形成した装置を用いて実排水(糖系排水:500 mgCOD/L)の連続処理試験を行い、MFCの多槽化が排水処理性能に及ぼす影響を評価した。2台のMFCの直列接続により、各槽における有機物濃度や組成が安定化し、その結果、良好な排水処理性能(COD除去率79%)や発電性能(各MFCの出力密度 0.53-0.55 W/m3)が得られた。また、運転有機物負荷が高くなると発電よりもメタン発酵によるエネルギー損失が大きくなる事が明らかとなり、容積負荷1.0 kgCOD/m3/day以下での運転が望ましい事が明らかになった。電気回路の直列接続(スタック化)では装置全体での観測電圧値の上昇が、並列接続では装置全体での観測電流値の増加が観察された。 各電気回路接続による微生物菌相への影響評価を目的として真正細菌の16S rRNA遺伝子を対象としたPCR-DGGE法による解析を行った。その結果、いずれの電気回路条件においても電極上にはGeobacter属(発電微生物)が高い割合で存在していた。即ち、電気回路的な条件での微生物菌相への影響はほとんど無く、安定した微生物菌相を維持出来る事が分かった。 本研究では微生物燃料電池の容積負荷の設定は処理性能だけでなく、その発電性能へも大きな影響を与える事を明らかとした。特に低容積負荷時では後段のMFCは容積負荷不足による発電性能の低下が観察された。また、高容積負荷の場合にはメタン生成によるエネルギー損失も大きくなったため、最適な容積負荷での運転が必要であった。電気回路の接続方法では直列接続、並列接続共に処理性能や微生物菌相への影響は無かったが、回路内電圧値の上昇を見込めた直列接続が特に有効であるといえた。
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