研究課題/領域番号 |
24651092
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
吉田 篤正 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60174918)
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研究分担者 |
木下 進一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70263209)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 保水性材料 / 乾燥速度 / 粒状 / 多孔質 / 塗膜 / 半球反射率 / 散乱 |
研究概要 |
保水性材料は表面に到達した日射エネルギーを内部に保有する水分の蒸発により熱を吸収することで,気温上昇に伴う顕熱輸送を抑制する効果が期待されている.しかし時間が経過するにつれて,蒸発性能は低下し,内部に存在する水が十分に活用できていない課題がある.本研究では粒状の保水性多孔質材料について,その蒸発性能に及ぼす粒径の影響について恒温恒湿槽を用いた乾燥実験を行うことにより評価した.乾燥速度は粒径が大きい試料は粒径の小さいものと比べて遅い.一方,表面温度は最も早く上昇し始める.また含水率は一定時間後にはほぼ一定となり,温度も厚さ方向に一様となっているからほぼ平衡状態に達しているといえる.含水率の値は,他の条件と比べて高い値で停滞していることから,粒径の大きい条件では下層の水分が十分に活用されていない可能性がある.また層の厚さを大きくすると,層全体で存在する水分量は多くなり,特に粉末試料では定率乾燥期間が長くなった. 表面の反射特性を支配する塗膜の性能を評価するには半球分光反射率が重要となる.塗膜を調合する前に実際に塗膜を用いる環境の条件をより考慮できる数値解析が行えれば,高日射反射率塗膜の性能向上や普及に繋がる.そこで,拡散光と直達光の両方が考慮できるなど,柔軟な条件下で解析が行える手法としてふく射要素法を導入する.この手法を用いて,塗膜に含まれる顔料の粒径および塗膜の厚さが反射特性に与える影響について調べた.具体的には、TiO2粒子を含む塗膜の半球分光反射率の算出を行い,塗膜厚さと顔料粒子の粒径が反射特性に与える影響を調べた.塗膜の反射率の波長依存性には顔料の粒径が大きく影響することが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究計画は概ね着手済みであるが、実験関係で精度検証が遅れて、十分な結果が得られていない部分がある。以下に現在の進捗状況を記載する。 保水性材料については、蒸発持続性の長い高機能な多孔性材料を開発することを主眼に置き、粒状の保水性多孔質材料に注目した。粒径を変えて、乾燥速度の測定を実施し、定性的な傾向については把握することができた。材料内部の熱・水分移動特性の計測・評価法を開発しに関しては、多くの部分が次年度の課題として残された。その中で光音響法による熱物性測定技術の開発については、基礎的な段階は終了し、次年度に完成を目指すことになる。 高反射率素材については性能評価の指標として、半球反射率を予測する数値計算のツールの開発を行い、一定の成果は得られた。半球反射率に与える顔料粒径など諸因子の分析は十分に行うことができなかった。指向性反射に関しては、表面に微細な凹凸構造を持たせることにより、一定の制御は可能であることが明らかになった。経年劣化や屋外空間の温熱快適性への影響については次年度の課題として残された。
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今後の研究の推進方策 |
蒸発性能に対する支配因子を特定し材料内部および表面の熱・水分同時移動モデルを構築するとともに,蒸発性能の向上のための最適な材料構造(表面での蒸発効率が低下し難い構造,水分分布が鉛直方向に均質化しやすい構造など)について同時に検討する. 含水した多孔性材料の熱・水分移動のモデルを構築する.さらにこのモデルを用いて内部構造を変化させたときの蒸発特性について,数値解析にて評価する.典型的な夏季の天候を与えて,その際の材料内部の熱および水分移動を解析することにより,蒸発効果をより長時間維持できる保水性材料の最適な構造について提案する. 直達日射および散乱日射それぞれの分光特性,材料表面での反射光の分光特性・指向性ならびに凹凸面での多重反射を考慮した詳細な数値解析プログラムを作成し,測定条件と同等の数値解析を行い,両者の比較により解析法の妥当性を検証する.解析にはモンテカルロ法に基づく手法を適用することを念頭におき,その他の手法の適用についても必要に応じて検討する. 上述の結果に基づき,高度な日射反射性能と水分蒸発性能を併せ持つハイブリッド材料の開発を検討する.日射反射性能を付加することにより,材料の表面層の温度低下に繋がり,水分蒸発の持続時間の延長に結びつくと考えられる.表面から大気への顕熱負荷を低減する最適な日射反射性能と水分蒸発性能の組み合わせを探る.現場測定への展開へ向けて,計測システム上の制約について検討する.その結果に基づき,現場測定に対応できる 計測装置の設計および製作を行う.対象試料のある現場へ計測装置を持ち込み,測定し,その結果を精査する.現場での簡易測定も視野に入れ,現場診断アルゴリズムを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費 77,7535円 (データロガー、熱電対、熱流計他) 旅費 50,0000 (国内および海外で研究成果発表、資料収集) 人件費・謝金 40,0000 (実験補助) その他 10,0000 (資料印刷他) 合計 1,777,535
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