研究課題
本研究は、電子バンチ内の電子分布の揺らぎが自らのコヒーレント放射によって増幅されるとされている、マイクロバンチング不安定性の機嫌を探ることを目的として、電子銃からの電子ビームの縦方向位相空間を直接測定する特殊なビーム診断システムを確立する開発研究である。電子銃からの電子ビームのエネルギーは一般に直流型では数100keV、高周波電子銃でも2、3MeVであり、電子の速度は光速に比べて僅かに遅い。チェレンコフ放射の放出角度が荷電粒子の速度(運動量)に依存するので、光の放出角度と放出時間を精度良く測定することができれば縦方向位相空間を知ることができる。本研究では、チェレンコフ光を一点に集光する特殊な非線形光学ミラー(亀甲羅鏡)を考案した。電子ビームはエネルギー広がり(速度広がり)を持っているため、集光されたチェレンコフ光は線状に収束される。従って運動量情報は位置情報に置き換わるので、この線状像をストリークカメラで測定すれば、一つの電子バンチの縦方向位相空間分布が直接的に測定できる。前年度までに設計した4fイメージングシステムを用いた光輸送路について、レイトレースによる精密なシミュレーションによって分解能を評価した結果、中心運動量が2.4MeV/cの電子バンチについて、運動量分解能1.15keV/cおよび時間分解能0.74psが達成できることを明らかにした。この分解能は電子銃からの電子ビームの診断で十分満足できる値である。亀甲羅鏡はアルミ削りだしで試作することができた。表面の非線形形状(横方向に球面、縦方向に放物面)は概ね設計値を満足したが表面の荒さ(ラフネス)は必要とする精度の約10倍あり、期待する分解能が実現できないことが分かった。亀甲羅鏡のラフネスの改善という課題が残ったが、本研究のビーム診断コンセプトに誤りはないと結論できた。
研究グループのサーバートラブルでwebページが壊れ、現在復旧中。以下のアドレスで公開予定。http://tansei.lns.tohoku.ac.jp/abpg/
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Proc. International Beam Instrumentation Conference
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