研究課題/領域番号 |
24651098
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土田 秀次 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50304150)
|
研究分担者 |
冨田 成夫 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 准教授 (30375406)
斎藤 勇一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (40360424)
|
キーワード | 分子配向 / 表面ウェイク / ナノキャピラリー / 高速分子イオン |
研究概要 |
ナノキャピラリーを用いた高速分子イオンの分子軸配向現象を調べるため、分子とキャピラリー内壁との相互作用の詳細について実験的研究を行った。実施した具体的な内容は、1.高速2原子分子イオンビームを用いて、分子がキャピラリー内を透過する際表面相互作用の影響を受ける「相互作用長」を実験的に求め、得られた結果により、分子配向制御を実現させるために用いるキャピラリーの幾何学的設計条件を決定することができた。2.高速分子のキャピラリー内壁相互作用によって生じる表面ウェイクポテンシャルの有無を調べるため、分子がウェイクポテンシャルに捕獲されたのち分子分解した粒子のエネルギースペクトルを高分解能磁場分析器によって測定した。その結果、ウェイク効果による分子配向現象が観測された。以上の研究成果は、国内会議で招待講演を行い、また、国際会議での口頭発表講演として採択された。現在、投稿論文としてまとめる作業を行っている。 次に、キャピラリーから出射した分子の幾何学的構造を調べる測定法において、レーザー照射法を取り入れた独自の測定システムの構築を行った。この方法は、従来までに行われている測定法に比べて、正確な分子構造決定が可能になると期待できる。 最後に、多原子分子イオンに対する配向ビーム生成を実現するため、新たな方法を考案し予備的な実験を実施した。具体的には、3原子から成る高速分子イオンを用い、その分子イオンを非常に薄い炭素膜に透過させ、透過した粒子のうち固体内のウェイク効果で配向したものだけをナノキャピラリーで選別する方法である。その結果、3原子の分子軸がビームの進行方向に整列したものを選別できることが明らかとなり、多原子分子イオンにも適応可能である手がかりを掴むことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画は、1.キャピラリー内でのウェイク効果の有無を実験的に明らかにすること、2.キャピラリーから出射した分子の幾何学的構造を決定する測定法を構築することに大別できる。 1の計画の達成度については、2原子分子イオンを用いたキャピラリー透過実験を実施し、キャピラリー内に発生する表面ウェイク効果により分子軸配向現象が起こるといった有益な結果を得ることが出来ている。これは、本研究課題の最終目標において重要な成果であり、本研究の計画が順調に進んでいる理由である。 2の計画の達成度については、配向ビーム生成を実験的に実証するための測定システムの構築として位置づけられ、本計画においてそのシステムの構築を行うことができたが、その有用性を調べる十分な実験を実施することが今後の課題として残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終目標を達成するために、以下の2つの課題について実施する。 1つ目の課題は、キャピラリーから出射する分子ビームの配向度を実験的に評価することであり、その評価方法に前年度に構築したレーザー照射法分子分解イメージング法を用いて行う。この方法は予備実験を既に実施し今後の実験計画を十分推進するできる準備が整っている。 2つ目の課題は、本研究課題の方法を多原子分子イオンの配向ビーム生成に適応可能とする試みを行う。この方法は、キャピラリーを用いた配向ビームを選別するといった新しい方法であり、この方法も予備実験を既に実施しており、今後の研究を十分推進できると考えている。これらの課題は、キャピラリーを用いた配向ビーム生成法の有用性を評価す上で重要であり、余裕を持った計画を立て確実に実施する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本課題の物件費の執行において、当初の予定では、蛍光アノード付マイクロチャンネル検出器とCCDを組み合わせた二次元画像計測システムを構築において200万円を執行する予定であったが、研究を進めている過程で当初計画していたシステムの弱点が判明し、その弱点を補うために新しい考え方のシステム構築を行った。再考したシステムでは、レーザー照射システム装置が備えられていることが必要となり、その購入に本年度物件費150万円を執行した。その差額が次年度使用額となっている。 変更したシステムには未だ不十分な部分があり、その部分を完成させる費用として執行する予定である。具体的には、システムに用いる検出器の可変機構を行う機器の購入に充てる予定である。
|