研究課題/領域番号 |
24651099
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 俊晴 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00273532)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電子線型加速器 / 放射光 / 遷移放射 / コヒーレント / 円偏光 |
研究概要 |
電子線型加速器の短バンチ電子ビームから発生する大強度コヒーレント放射を光源とした、テラヘルツ・サブテラヘルツ領域における制御可能な円偏光発生技術を開発することを目的とし、ワイヤーグリッド偏光子を放射体としたコヒーレント遷移放射の基礎的性質を実験的に明らかにした。放射体として用いたワイヤーグリッド偏光子は、直径10μmのタングステンワイヤーを25μm間隔で均等に張ったものである。実験は京都大学原子炉実験所の電子ライナックを用いて行った。遷移放射のスペクトル分布は金属箔を放射体とした場合と似ており、約2cm-1から20cm-1付近まで分布していた。偏光方向については、前方放射、後方放射とも、偏光子のグリッド方向と平行な直線偏光となることがわかった。またこれまでは、電子軌道上に2枚の金属箔放射体を置いた場合、電子ビームエネルギーで決まる「形成層の長さ」の存在のため、放射体間の距離により遷移放射の強度が変化することが知られていたが、偏光子を放射体として、かつ両者のグリッド方向を垂直に設定した場合には、放射体間距離とは無関係に強度は一定となることを初めて明らかにした。以上の実験結果は、本研究で目指す円偏光の発生・制御の大前提となる重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワイヤーグリッド偏光子を放射体としたコヒーレント遷移放射の基礎的性質を実験的に明らかにし、当初考えられていた結果が得られたことから、本研究で目指す円偏光の発生・制御が可能であるという見通しがついたため。 なお、交付申請書では、実験で得られたデータに基づき、光源室用大型真空容器を製作する予定であったが、平成24年秋からの世界的なヘリウムガス供給不足により検出器用液体ヘリウムが入手できず、当初11月に実施予定であった実験が平成25年2月に延期になった。そのため製作は25年度に行われることになるが、25年度予定の実験には間に合うため、事業実施への影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
まず前年度の実験結果を踏まえ、光源用大型真空容器、遷移放射の位相制御用遅延光学系などを製作する。また、波長と位相を同期して制御することを可能にするため、回折格子型分光器制御装置の改修を行う。その後、京都大学原子炉実験所の電子ライナックを用いて、円偏光の発生実験を行う。第1放射体と第2放射体からの直線偏光遷移放射を、位相をずらして重ね合わせることにより円偏光を発生させ、その放射強度や円偏光度を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「現在までの達成度」でも述べたように、世界的なヘリウムガス供給不足により24年度の実験実施が遅れ、同年度に製作予定であった大型真空容器の製作が未実施となっている。これを25年度当初に製作して同年度の実験に間に合わせるとともに、位相精密制御装置や回折格子型分光器改修のための光学部品、検出器用の液体ヘリウム購入に使用する予定である。また研究成果の発表のため、国内学会、国際会議への旅費の使用を予定している。
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