研究課題/領域番号 |
24651099
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 俊晴 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (00273532)
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キーワード | 電子線型加速器 / 放射光 / 遷移放射 / コヒーレント / 円偏光 |
研究概要 |
電子ライナックで加速された短バンチ電子ビームから発生する大強度コヒーレント放射を光源とし、テラヘルツ・サブテラヘルツ領域における制御可能な円偏光発生技術を開発することを目的として、ワイヤーグリッド偏光子を放射体としたコヒーレント遷移放射の基礎的性質を実験的に明らかにした。使用したワイヤーグリッド偏光子は特殊なものではなく、直径10μmのタングステンワイヤーを25μm間隔で張ったもので、一般的にはフーリエ変換干渉分光計などの光線分割に使用されている。実験は京都大学原子炉実験所の46MeV電子ライナックを用いて行った。放射体の角度や距離などの配置を変えながら観測されるコヒーレント遷移放射の偏光度を測定した結果、ビームの進行方向に放射される遷移放射(前方放射)の偏光方向は、ワイヤーを張る方向と同一の方向となる一方、ビーム進行方向とは逆方向に放射される遷移放射(後方放射)についても、ワイヤーと同方向の偏光成分のみを持つことを初めて明らかにした。金属箔を放射体とする通常の遷移放射は、ビーム軌道を中心軸として放射状に分布するため、複数の放射体を使って異なる直線偏光を同時に発生できる今回の研究成果は画期的であり、本研究で目指す円偏光の発生・制御にとって重要な成果である。また、波長と位相を同期して制御することを可能にするために、単色計である回折格子型分光器を用いる予定であるが、PCからの制御が可能な分光器制御装置への改修も完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は平成25年度中に完了予定であったが、平成24年秋からの世界的なヘリウムガス供給不足により検出器用液体ヘリウムが入手できず実験を行うことができなかった。しかし平成26年度までの延長申請が許可されたことに加え、ワイヤーグリッド偏光子を放射体としたコヒーレント遷移放射の基礎的性質が実験的に明らかになったことにより、本研究で目指す円偏光の発生・制御が可能であるという見通しがつき、平成26年度中に事業は完了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、これまで得られた実験結果を踏まえ、光源用大型真空容器、遷移放射の位相制御用遅延光学系などを製作する。その後、京都大学原子炉実験所の電子ライナックを用いて、円偏光の発生実験を行う。第1放射体と第2放射体からの直線偏光遷移放射を、位相をずらして重ね合わせることにより円偏光を発生させ、その放射強度や円偏光度を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は平成25年度中に完了予定であったが、平成24年秋からの世界的なヘリウムガス供給不足により検出器用液体ヘリウムが入手できず、予定していたデータ取得が遅れ、大型真空容器の製作、及び円偏光発生実験が未実施となっているため。 大型真空容器の製作が未実施となっているため、これを26年度当初に製作するとともに、位相精密制御装置や検出器用の液体ヘリウム購入に使用する予定である。また研究成果の発表のため、国内学会への旅費や論文出版への使用を予定している。
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