研究課題/領域番号 |
24651102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
磯山 悟朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80125989)
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研究分担者 |
加藤 龍好 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (20273708)
川瀬 啓悟 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60455277)
入澤 明典 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (90362756)
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キーワード | 量子ビーム / 光源技術 / 加速器 / 高性能レーザー |
研究概要 |
FELやSASEを電子ビームのバンチング装置として使用するコヒーレント放射が従来型光源の限界を超える高強度で高輝度の単色光とその高次高調波の発生が可能であることを実験的に検証するために、阪大産研Lバンド電子ライナックと自由電子レーザー装置を用いて遠赤外線領域でFELやSASEを発振させ、使用済みの電子ビームが偏向磁石で放射するコヒーレント放射の強度と波長スペクトル、時間構造などの特性を計測する研究を進めている。 FEL発振に使用した電子ビームは、偏向磁石で45度曲げてビームダンプに捨てる。この偏向磁石で発生するコヒーレント放射を測定するために、偏向磁石用真空チェンバーを設計t・製作した。直進するFEL光がこの真空チェンバーを通過するゼロ度方向の出入口と、FEL発振に使用した電子ビームを左に曲げてビームダンプに導く45度方向出口の中間にコヒーレント放射を取り出す。即ち、電子ビームが直進方向から数度曲がった時点で接線方向に出るコヒーレント放射を取り出して測定する。取り出したコヒーレント光を平行光束にして、取出し口の反対側にある測定室に導くためには、FELビームラインを跨ぐ複雑な光輸送路を設計、製作しなければならない。そこで、下流側から凹面鏡を適切な位置に挿入してコヒーレント光を上流側に反射し、ダイアモンド窓を通して低真空の光輸送路に導く。凹面鏡の位置を変えると光輸送路のビームサイズを変えることができる。 コヒーレント放射の駆動源であるFELに関しては、ライナックの電子銃用に新たに開発した27 MHzで動作するグリッドパルサーを用いて、電子ビームのピーク電流を4倍高めることで波長70~80ミクロンでマクロパルスエネルギーが25ミリジュールに達する高出力運転を実現した。これにより電子ビームに光の波長で強い密度変調が発生すると考えられ、強いコヒーレント放射の発生が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年度に、ウイグラー下流の偏向磁石用に光取出しポート付きの真空チェンバーを新たに製作し、光ポートから既存のFEL用の光輸送路に接続するための真空光輸送路を製作して設置し、試験的な実験を開始する計画であったが、光輸送路の設計に問題が有り、再検討することにした。それに基づき、真空チェンバーの設計と製作をやり直したために、未だ実験を開始できない。
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今後の研究の推進方策 |
完成した偏向磁石用真空チェンバーをFELビームライに取付け、コヒーレント光の測定を開始する。従来は、FELの光輸送路に接続して、測定室でコヒーレント光を観測する計画であったが、計画を変更してFEL光を同時に測定できるように、真空パイプの中を反射光学系によりコヒーレント光を約5m輸送する独立した光輸送路を設ける。この実験に先立ち、試験実験として放射線レベルが高く人が立ち入ることができないFEL直近に検出器を置きコヒーレント放射の測定を行う。コヒーレント光の波長や時間構造などの特性を測定することは出来ないが、コヒーレント放射の発生を直接、簡便に観測することが出来る。 FEL発生時の電子ビームエネルギー変化を見る予備実験を行った結果、電子ビームエネルギーが大きく低下するのが分かった。FELの高出力化により. 電子ビームのマイクロバンチングが大きく発達することが考えるため、FELを駆動源とした電子ビームのマイクロバンチかが放射する強いコヒーレント放射を実験的に検証する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
FEL下流の偏向磁石用真空チェンバーと光輸送路の基本設計を変えた。真空チェンバーが完成した後に光輸送の光学系が確定するため、光輸送路の製作を延期した。 光輸送路の製作とコヒーレント光の計測に必要な消耗品、学会発表等の旅費に使用する。
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