研究課題/領域番号 |
24651105
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
早川 恭史 日本大学, 理工学部, 准教授 (40307799)
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研究分担者 |
高橋 由美子 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (70339258)
中尾 圭佐 日本大学, 理工学部, 助手 (30440035)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 量子ビーム測定手法 / 回折型X線位相コントラスト / コーンビーム / パラメトリックX線放射 / 小角散乱イメージング |
研究概要 |
パラメトリックX線放射(PXR)を発生原理とする日本大学電子線利用研究施設(LEBRA)のX線源を用い、コーン(円錐)ビームとしての特性と、X線位相コントラスト法の一種である回折強調型イメージング(DEI)が両立することの実験的実証を試みた。 コーンビームの拡大効果をDEI測定で確認するには大面積のアナライザー結晶が必要であるため、検討の結果、Si(220)面を用いて実証実験を行うこととなった。X線エネルギー18keVにおいて試料-アナライザー結晶の距離が0.3mと2mの場合のDEI像の比較を行った。LEBRA-PXRの実験セットアップでは、後者は前者に対して25%の拡大像が得られるはずであり、得られたDEI像は実際にその倍率となっていた。画像処理の結果、典型的な位相勾配像が得られており、通常は10μrad以下の平行性が必要となるDEIで円錐拡大効果が観測されるという、ユニークな結果が実際に得られた。しかしながら、距離が近く拡大効果の少ない場合に比べ、試料のエッジの鮮明さが明かに低下することもわかった。同じ試料を伝搬型位相コントラスト法で測定するとエッジ強調効果が得られており、拡大DEI像のエッジのボケは散乱などが影響している可能性がある。 また、18keVのみならず25.5keVにおいても安定にDEI実験を実施する環境が整ったため、2年目に重点的に行う予定であった、PXRを用いた極小角散乱イメージングの可能性の検証に着手した。発泡スチロールとアクリルを試料として25.5keVでDEI測定を実施し、吸収コントラストと屈折による位相コントラストではアクリルの方が強いコントラストが得られたが、画素毎の回折曲線の規格化されたピーク高を画像のコントラストに用いたところ、発泡スチロールで強いコントラストを得ることができた。これは小角散乱によるコントラストと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要な目的である、コーンビームによる拡大効果とDEI法によるX線位相コントラスト像取得の両立については、実際に実験で確かめることができた。1年目には2種類の拡大率での実験しか実施できなかったため、比較、分析するにはまだ十分ではないが、拡大効果を確認することができただけでも重要な知見が得られたといってよい。 また、2年目以降に実施する予定であった、極小角散乱イメージングに関して、予想以上に肯定的な実験結果が得られた。 以上より、研究全体においては、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度にPXRを用いたDEI実験において、コーンビーム拡大効果が実際に確認された事に基づき、拡大率やPXRエネルギーが異なる数種類の条件での測定と結果の比較を行う。その上で、DEIで得られたX線位相勾配像に空間微分処理を施し、それによって得られるエッジ強調像と伝搬型の位相コントラスト像との比較を行う。 極小角散乱イメージングについては、初年度で見通しが立った25keV近辺で実験を行い、基礎的なデータを収集する。特に小角散乱効果を画像のコントラストとして定量化する合理的な演算処理について検討し、画像のビジビリティについての議論を深めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
イメージング実験における画像計測の低ノイズ化するために、現有のイメージセンサーを冷却して使用することを計画し、そのための主要な機器の準備をすることができた。しかし、断熱材や固定するための治具などがまだ用意できていないため、それらを消耗品として調達し、冷却系を組み上げる。 また、拡大DEIや極小角散乱イメージングなど、非常にユニークで先端的な成果が得られつつあるので、国内学会だけでなく、国際会議で成果報告するための旅費として使用する。
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