パルス熱外中性子ビームの単色度を向上させる光学系として、拡張したスピンフリップチョッパーの性能を考察し、J-PARCパルス中性子源に配備した場合の性能を求めた。物質研究における汎用性を勘案し、適用エネルギー範囲を200eV程度まで拡張することを想定して研究を進め、得られるビーム強度の算定までを終えた。その結果をもとに、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所における中性子S型課題として、J-PARCのパルス中性子施設に配備する可能性の検討に入ることとなった。 なお、この実現のためには、熱外中性子の偏極子と熱外中性子導管が必要になる。熱外中性子の偏極子には、$1$eV付近では偏極$^3$Heスピンフィルター、より高いエネルギー領域($100$eV付近)では偏極陽子フィルターを用いるのが適当と考えられる。熱外中性子導管としては、$m=10$という巨大な反射臨界角のスーパーミラー導管を用いることが望ましい。現状ではそのような導管の作成に成功した例は報告されていないが、$m=10$に相当する広帯域モノクロメータの作成は成功しており、J-PARC BL05において超冷中性子発生に用いられている。これらの光学デバイスは物質研究に限らず、また熱外中性子利用に限らず必要となるものであり、別途に開発研究が進められている。
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