研究課題/領域番号 |
24651109
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 義人 独立行政法人理化学研究所, 物質系放射光利用システム開発ユニット, ユニットリーダー (80260222)
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研究分担者 |
伊藤 基巳紀 独立行政法人理化学研究所, 物質系放射光利用システム開発ユニット, リサーチアソシエイト (20506109)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 量子ビーム測定手法 / 光ファイバー / X線ビーム制御 |
研究概要 |
本研究は、放射光X線ビームを中空ガラスファイバーを用いて、任意の向き・場所に伝送する手法の開発である。これによりX線照射方向や照射位置の制御のほか、パルス遅延時間制御や偏光制御などへの応用を目指すものである。 初年度である平成24年度では、単芯キャピラリに対して、入力部の受け入れ角や、出力ビーム特性の定量評価を行った。本課題では、ファイバーの曲率を制御するために、肉厚を調整した中空ガラスファイバーを用いる。ファイバーの形状は、長さ0.7 m、内径50 ミクロン、外径2 mmである。入力部の調整機構として、角度と位置制御ができる自動精密ステージつきのファイバーホルダー姿勢制御装置を作製し、これを用いて、このガラスファイバーのビーム受け入れ角を評価した結果、波長0.1 nmのアンジュレーター光(SPring-8, BL19LXU)に対し、約4 mradであることがわかった。また、出射側の固定治具を掃引することにより、出射ビームの向きの制御を行った。±40 mrad以上の偏向が可能で、その最大透過率は60 %以上、最大6E10 photons/sまで確認した。出力光の発散角は1-2 mradであった。また、透過率の光子エネルギー特性も評価した。さらに、このファイバーを用いて、固定薄膜試料に対して簡単な吸収率マッピング測定を行った。 以上の結果は、国際会議(1件)、国内会議(1件)、国際会議プロシーディングス(1件)にて発表した。 さらに、長さ1.5 m、内径20ミクロンの中空ガラスファイバーを用意し、同様の条件でスループットを評価した結果、20 %の透過効率を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、単芯キャピラリに対して、入力部の受け入れ角や、出力ビーム特性の定量評価を行うことであり、長さ0.7 m、内径50 ミクロン、外径2 mmのガラスファイバーに対して、ビーム受け入れ角を評価した結果、波長0.1 nmのアンジュレーター光(SPring-8, BL19LXU)に対し、約4 mradであることが評価できた。 また、出力ビーム特性については、出射側の固定治具を掃引することにより、出射ビームの向きの可変範囲を測定した。結果は±40 mrad程度ということでほぼ計算通りの結果となった。また、最大透過率は60 %以上、最大6E10 photons/sということで、理想に近い値を得ることができた。出力光の発散角も検出器の位置をビーム軸方向にずらすことによりそのビームサイズの変化から求めることができ、1-2 mradと評価できた。 また、透過率の光子エネルギー特性も放射光の波長を変えながら評価することができた。 また、新規に設計・購入した長さ1.5 m、内径20ミクロンの中空ガラスファイバーについても、同様の条件で20 %のスループットを得ることができた。やや透過率が低いが、デモストレーション用には十分と言える値である。2年目では、このガラスファイバーの仕様を基本として、その特性の定量的評価、より長いファイバー伝送を目指して、応用に耐えうる性能を探求する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度で得た、ファイバーによるX線ビームの偏向の大きさ、スループットの大きさから、伝搬可能な長さのキャピラリを検討し、可能なかぎり長いキャピラリを用意することが今後の計画としていた。既に長さ1.5 m、内径20ミクロンの中空ガラスファイバーのスループットが20 %と、まずまずの値が得られたので、このファイバーの、最大偏向角、走査位置範囲の定量評価を行う。また、より長い伝送を目的として、ファイバー接続の可能性について検討を進める。 さらに、この仕様のファイバーの偏向による走査のデモストレーションを、小さな金属泊をちりばめたデモ用試料に対して行い、その試料の吸収端前後に相当する波長をもつX線ビームを用いることにより、元素マッピングを行う。 また、時間制御の評価を行うために、X線ファイバーを湾曲させて、パルス幅50 psの大型放射光施設SPring-8のX線パルスが遅延するようにステージを調整し、パルス幅の伸び具合を見積もる。また、実際に、X線ストリークカメラにより、その時間遅延量の観測と評価を目指す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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