研究課題
原子レベルの空孔型欠陥分布の測定に関して陽電子顕微鏡は電子顕微鏡に比べて優位性があり、他の計測手法では観察できない顕微鏡像が取得できる。しかし、陽電子顕微鏡の一種である再放出型の陽電子顕微鏡(PRM)に関しては、過去の研究では陽電子源強度が不十分で、画像取得に長時間必要という問題があり、実用化がなされて来なかった。この技術課題を解決するため、本研究では、電子線形加速器による高強度陽電子パルスビームを用いたPRM装置の開発を行っている。本研究で開発するPRMの最大視野(~0.3mm)に比べ、電子リニアックにより生成した低速陽電子ビーム径は直径約10mmΦと大きいため、ビームを集束して陽電子フラックス密度(e+/sec/mm2)を如何に増大できるかが重要な開発要素である。最終年度である本年度は、光電子顕微鏡の静電レンズをベースにPRM装置を構築するとともに、低速陽電子を輸送しているソレノイド磁場からPRMが設置されている無磁場空間にビームを引き出す時に引き起こされるエミッタンスの増大を抑制し、ビーム集束径を最小にする方法の開発を行った。ソレノイド終端磁場の集束ビーム径に与える影響が最小になる様に軟磁性体スリット(スリット幅0.1mm、スリット間隔2mm)で構成される磁場終端デバイスおよびビーム集束レンズを設計・製作し、PRM装置の入射部に設置した。電子線形加速器で生成し、ソレノイド磁場により輸送された低速陽電子ビームを静電レンズにより集束し、PRMの試料位置に設置した蛍光面付MCPによりビーム集束径を測定した。その結果、過去のPRM研究の方法と比較して陽電子フラックス密度が増大することを実証し、PRMの画像取得時間を短縮できることを示した。
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JPS Conference Proceedings
巻: Vol. 1 ページ: 014006-1-4
10.7566/JPSCP.1.014006