研究課題/領域番号 |
24651113
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水野 元博 金沢大学, 物質化学系, 教授 (70251915)
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研究分担者 |
大橋 竜太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50533577)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ空間科学 |
研究概要 |
本年度は,メソポーラスシリカ(MCM-41)の規則性細孔内部に閉じ込められた水の液‐液転移の解析に取り組んだ。 細孔径2.4 nmと2.0 nmのMCM-41について,細孔中に重水を完全に満たし,重水素核のNMRのスピン-格子緩和時間とスペクトルの線幅及び強度の温度変化を測定し,DSC測定より報告されている相転移温度(~230 K)付近のこれらの挙動を詳細に調べた。この結果,相転移温度付近では温度が下がるにつれて正四面体構造に近い低密度水の割合が増加することが明らかになった。また,水分子の回転運動の相関時間は転移点より高温では高密度水で予想されるVFT型の温度依存性を示し,低温では低密度水で予想されるArrhenius型の温度依存性を示した。本研究により,水クラスターの構造及び水分子のダイナミクスの観点から液‐液転移の存在及び相転移に伴う水の状態変化を明らかにすることができた。 水の液‐液転移は主にコンピュータシミュレーションにより存在が予想されているが,バルクの水は液‐液転移より高温で凍るため実験で検証することは極めて困難である。また,DSC測定により報告されたMCM-41細孔中の水の相転移は液‐液転移であると考えられているが,確証は得られていない。 本研究は,重水素核が有する局所的な構造や相互作用に敏感な核四極相互作用を利用して,MCM-41細孔中の制限された空間における水の相転移を詳細に調べ,報告されている相転移が高温の高密度水から低密度水に変化する液‐液転移であることを示した。また,水の状態が相転移によってどのように変化するかを明らかにした。本研究は制限空間における水の新たな性質を導き出した点で意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により,これまで実験的に検証することが困難であった、水の液‐液転移について詳細に調べることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
生体高分子内の制限空間における水の挙動解析,メソポーラスシリカの規則性細孔内のNaCl水溶液における水の挙動を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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