研究課題/領域番号 |
24651113
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水野 元博 金沢大学, 物質化学系, 教授 (70251915)
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研究分担者 |
大橋 竜太郎 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50533577)
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キーワード | ナノ空間科学 |
研究概要 |
本年度はメソポーラスシリカSBA-16 (細孔径7.8 nm) 細孔内に0.0-4.0 M NaCl重水溶液を取り込ませた測定試料を調製し、2Hと23Na NMRを用いて水溶液中の水分子のダイナミクスと溶液構造について解析を行った。 2H NMRスペクトルの線形解析とスピン-格子緩和時間(T1)の解析から水和水の回転運動の相関時間の温度変化を調べた。細孔内の水分子の運動の速さには分布が存在し塩濃度が大きくなるにつれてその分布は小さくなることが分かった。このことから動的不均一性は主としてシリカ表面との相互作用に由来していると考えられる。水分子の運動の活性化エネルギーは190 Kよりも高温側では51-56 kJ/molと求められた。この値はBulk氷に見られる4サイトジャンプの値(57 kJ/mol)とほぼ等しく水素結合をおよそ4つ切断するエネルギーに対応すると考えられる。190 K付近で水分子の運動は急激に遅くなっており、細孔内でNaCl水溶液から NaCl・2H2O+氷の状態に相転移していると考えられる。190 Kよりも低温では水分子の運動の活性化エネルギーは65-118 kJ/molと大きな値を示した。特に塩濃度2.0-4.0 Mの試料では大きな活性化エネルギーの値を示しており、水分子の運動が大きく束縛されていることが分かった。 23Na NMRより見積もられたNa位置での電場勾配パラメータはBulkのNaCl・2H2OやNaCl水溶液のものに近いことが分かった。このことから7.8 nmの制限空間内でもNa+イオン周辺の局所的な環境はBulkのものに近いことが分かった。また190 K以下では低温になるにつれて23Na NMR化学シフトに低磁場シフトが観測され、低温になるにつれてNa+イオン周辺の水和水が高密度になっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細孔内にNaClが存在する場合の水の挙動を調べるところまで研究が進んだ。NMR装置のシムの故障により、詳細なNaCl濃度依存性の解析が十分ではないが、NaCl側の水の挙動は明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
水が存在する細孔の形状,水の液-液転移,NaClの影響に着目して,引き続き重水素核,ナトリウム核のNMRの測定・解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の途中でNMR装置のシムの修理が必要となり、本年度中に行う予定であった異なったNaCl濃度の試料の測定ができなくなったため、試料調製用の予算を翌年度に繰越し実験・解析を行うことにした。 繰越金は異なったNaCl濃度の試料の調製およびNMR測定に用いる。翌年度分の助成金は計画通り細孔形状や液-液転移による水の挙動変化の実験・解析のために用いる。
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