研究課題
共役分子が自己集合して形成する超分子ナノファイバー(SNF)は、その異方的な形状に由来した機能性を発現できる。そのため、有機エレクトロニクス材料や太陽電池などの多岐に渡る分野に革新をもたらす次世代材料として注目を集めている。このSNFに外部刺激応答性を付与して可逆的に物性を制御することができれば、さらに有用なスマートマテリアルとなる。本研究では、ベンゼン環をアセチレンやブタジインで架橋したπ共役環状分子「デヒドロベンゾアヌレン(DBA)」の非中心対称的な位置に剛直な極性官能基であるカルボン酸メチルエステルを導入したブーメラン型の一連の分子を用いて外部刺激応答性の高機能性SNFの創製を行った。このようなDBA誘導体は、π‐π相互作用に加えて双極子―双極子相互作用が分子のスタッキングを促進する一方で、分子の低対称性がスタッキング軸と直交する方向への自己組織化を阻害するために、高アスペクト比のSNFを与えることが期待された。実際、過飽和溶液を急冷することによって、結晶性の高いSNFを簡便に作成でき、特にオクタデヒドロジベンゾ[12]アヌレン誘導体のSNFは、これまで報告されているSNFよりも一桁ほど大きな電荷移動度を示すことを明らかとした。この高い移動度は、SNFの高い結晶性に由来する。すなわち、従来のSNFは、柔軟な長鎖置換基を導入した分子が用いられてきたが、その方法は汎用性がある一方で、低結晶性に由来する乏しい電荷輸送能や精密な構造制御の困難さが問題であった。一方、本系は、剛直なメチルエステル基のみを有するために高い結晶性が実現した。さらに、このSNFに外部刺激として超音波を照射すると、別の構造をもつ熱力学的により安定なSNFへと転移することが明らかに立った。この構造転移にともない、電荷輸送挙動も顕著に変化した。
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