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2013 年度 実施状況報告書

珪藻殻形成にヒントを得たシリカ自己組織化塩基性ペプチドの創成

研究課題

研究課題/領域番号 24651119
研究機関関西学院大学

研究代表者

松田 祐介  関西学院大学, 理工学部, 教授 (30291975)

キーワード自己組織化 / ナノバイオ / シリカ構造 / 塩基性ペプチド / 珪藻殻
研究概要

珪藻の殻は数十ナノメートル単位のメゾスコピックなサイズの整列構造を自己組織化する最も精密なバイオミネラリゼーションである.この作用は,近年の研究から殻に分泌される塩基性ペプチドとポリアミン鎖の作用によることが分かってきている.本研究では,この作用にヒントを得,人工的に作った様々なパターンの塩基性ポリペプチドによるシリカバイオミネラリゼーションの可能性を探ることを目的としている.最終的に,基板表面上に珪藻殻に見られるようなナノメートル単位の整列構造を自己組織化するペプチドのセットを開発すること,およびその作用原理を明らかにすることを目標としている.
平成25年度は計画に従い,以下のサブプロジェクトを行った.1. 平成24年度より引き続き,単純な2次構造に塩基性アミノ酸を埋め込んだ様々なペプチドの設計を行い,大腸菌にて生産させ,精製した.また,より安価・効率的な生産を目指して黒麹カビの菌体外タンパク生産系に設計したDNAを導入し,大量生産を試みた.2. 精製した人工ペプチドを順次シリカ固体形成反応の確認に供した。3. この人工塩基性ペプチドと相互作用するペプチドとして,まずは本ペプチドに親和性を有する抗体を作製し,反応系に混入する実験を開始した.4. 生産,精製,および機能を確認したペプチドについてpH,塩濃度,ケイ酸濃度,ケイ酸源,ペプチド濃度等を変え,精製するシリカの構造を定性的,定量的に解析した.その結果,ケイ酸の粒径,形状の制御は可能であるが,繊維状や平板上の構造を作ることが困難であった.5. 平成24年度に試作した人工塩基性ペプチドを吸着するGa/As基板上での反応にはまだ至っていない.
相互作用ペプチドと基盤の設計による高度な形状制御とその原理のモデル化はまだ出来ていないが,シリカバイオミネラリゼーション作用を持つ人工ペプチドの種類が増えることにより,シリカ形状とペプチド構造のデータの蓄積がなされている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

様々な塩基性ペプチドの設計を行い,これを様々なリピート数に繋げるなどの加工を行い,順次生産・精製を行っており,この部分は順調に推移している.しかし,このような人工ペプチドから作られるシリカがほとんどの場合,球形になってしまい,複雑な構造形成に至っていない.この部分で,球状以外の構造を作る鍵となる因子を見つけることが出来ていないため,ペプチド構造と生成するシリカの相関関係をモデル化し,その機構を探る段階に入っていない.この問題は本プロジェクトの最も難解な部分であることを予測していたため,想定されたことではあるが,今後反応環境を液相界面にするなどしてブレイクスルーが必要である.

今後の研究の推進方策

遅れている部分に対処しつつ,当初の研究計画にあげた項目に従って以下のように進める予定である.1. 引き続き,体系的に設計したペプチドの生産と精製を行う.一方,活性確認や機能特性の解析に於いては,液中の環境でペプチド物性のみを駆動力とした構造形成反応だけに頼らず,二層界面を反応場に利用したり,反応液表面の大気との接触部分を反応場として利用するなど,シリカ個体成長方向が制限されるような環境を積極的に選び球状以外のシリカを作りやすい反応環境を明らかにしてゆく.この結果をフィードバックして,新たな設計理論を構築し,第二世代以降のペプチドを設計,生産する.2. これまでに生産したペプチドについても新たな反応環境での挙動を確認し,ペプチドの構造と生成シリカ構造の相関データを蓄積する.3. 機能特性の分析が行われたペプチドについて,この活性を抑制・修飾しうる構造(電荷の中和や疎水性相互作用など)を有すると考えられるペプチド(例えば抗体なども有効利用する,或いはペプチド以外の化合物も含める)を設計し,これを生産,精製する.また,シリカ固体形成ペプチドについてもその構造中にお互いが相互作用して相互に結合し得る人工ドメイン(疎水クラスタなど)を埋め込み,このような構造が元のペプチドにどのような機能を付加するかを分析する.4. 精製したペプチドについて順次反応条件と生成シリカ構造の相関を分析する.5. 単純な中心パターン(数マイクロメートルの六角形や方格)を描画した基板を作成し,ここに1~4の工程で作製し機能特性が決定しているペプチドを吸着する.この吸着ペプチドの働きにより中心パターン内に自己組織化されるシリカ構造の解析を行う.解析には走査型電子顕微鏡および捜査プロ―ヴ顕微鏡を用いる.この結果を構造形成の数理科学モデルにフィードバックし,モデルと反応条件の精密化を図る.

次年度の研究費の使用計画

支出予定であった消耗品の納期が遅れたため,繰越することにした.
当初予定していた消耗品(試薬)を購入する.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] バイオシリカ抗菌剤の特性・性能とその応用技術2013

    • 著者名/発表者名
      井上高康,堀口雅人,松田祐介
    • 雑誌名

      技術情報協会編 抗菌・抗ウィルス材料の開発・評価と加工技術

      巻: 2013年9月 第21節 ページ: 121-126

    • 査読あり
  • [学会発表] CCMs in two model strains of marine diatom

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Y
    • 学会等名
      The 8th International Symposium on Inorganic Carbon Utilization by Aquatic Photosynthetic Organisms
    • 発表場所
      Loyola University, New Orleans, Louisiana, USA
    • 招待講演
  • [学会発表] SLC4 family bicarbonate transporters in marine diatoms.

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Y
    • 学会等名
      EMBO Workshop The 2nd Molecular Life of Diatoms
    • 発表場所
      University of Paris, Paris, France
  • [学会発表] Molecular aspects of carbon acquisition mechanisms in marine diatoms.

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Y
    • 学会等名
      10th International Phycologycal Congress
    • 発表場所
      The Renaissance Orlando, Orlando, Florida, USA
    • 招待講演
  • [学会発表] 海洋性珪藻における新規ピレノイド貫通チラコイド局在タンパク質

    • 著者名/発表者名
      菊谷早絵,長里千香子,松田祐介
    • 学会等名
      第77回日本植物学会2013年度大会
    • 発表場所
      北海道大学,札幌市
  • [学会発表] 環境ストレスが誘導する海洋性珪藻Phaeodactylum tricornutumのアリル再編

    • 著者名/発表者名
      大井皓正,松田祐介
    • 学会等名
      日本藻類学会第38回大会
    • 発表場所
      東邦大学,船橋市
  • [学会発表] 分子マーカーによる海洋性珪藻有性生殖確認

    • 著者名/発表者名
      大井皓正,松田祐介
    • 学会等名
      日本珪藻学会第35回大会
    • 発表場所
      名古屋大学,名古屋市
  • [備考] 研究業績データベース

    • URL

      http://www.kwansei.info/src/

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公開日: 2015-05-28  

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