研究課題/領域番号 |
24651123
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 信夫 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (40126876)
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研究分担者 |
齋藤 晃 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (50292280)
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キーワード | スピン偏極電子銃 / 低速加速電子顕微鏡 / 散乱実験 |
研究概要 |
ナノ構造材料や生体物質の微細構造観察のため、低加速エネルギーの透過電子顕微鏡法が注目されている。本研究では60keV~20keV程度の相対論と非相対論の双方の効果を考慮する必要があるエネルギー領域における、スピンを考慮した相互作用効果について実験・理論の両面から研究を進める。 本年は(1)スピン偏極電子を用いた散乱実験と(2)時間変調電子線による計測系の構築の2項目について実施した。 まず、前年度に準備を行ったスピン偏極電子を用いて散乱実験を実施した。特に電子エネルギー損失分光と散乱角度に対するスピン依存性を測定を開始した。このうち散乱断面積については、装置をローレンツ顕微鏡に改良した後、パーマロイ薄膜中の磁壁を用いて、ローレンツ力と不均一磁場によるスピンによる偏向力の比較を行った。これにより測定可能であるのか検証を行った。また、スピン偏極電子線発生用レーザーに時間変調をかけることで電子線の時間構造を制御することに成功した。また、結像系に設けてある偏向器とドライブレーザーの同期を実現し、ロックイン測定が可能な測定系の構築に思考した。これにより、S/Nの向上と時間変調した電子線による微小電流計測が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りの実験装置の構築に成功しており、実験的検証を妨げる障害はない状態である。考えられる障害は検出時のS/Nの悪さであるが、これについても時間変調スピン偏極電子線により低減が可能であることを実証している。さらに前倒しで理論的アプローチについてもスピンを考慮したシミュレーションコード作成にも着手しており、順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
スピン偏極電子を用いた散乱実験に適したサンプルを選定し本格的な実験に入る。また、この実験結果を速やかに理論的知見と比較検討が出来るように、開発中のシミュレーションコードを完成させ、本年度用意したシミュレーション用PCを用いて様々パラメータにおけるシミュレーション結果を出しておく。これにより、実験結果を効果的に考察することで本研究の推進速度を加速する。 相対論効果を低加速エネルギー透過電子顕微鏡へ導入し、スピンとの相互作用を含めた散乱因子の振る舞いを解明する。
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