研究課題/領域番号 |
24651126
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池田 勝佳 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50321899)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズモン / ナノ熱源 / パターニング |
研究概要 |
本研究では、金属ナノ構造に誘起される局在プラズモンの緩和過程をナノ熱源として用い、熱加工や熱化学反応を、ナノメートルサイズの局所領域で実現することを目指している。まず、プラズモン研究でよく用いられている金ナノ構造を用いて、数100℃以下の比較的低温の反応を対象に、局所加熱の可能性を検討した。まず、水素終端化したSi基板とC=C結合を持つアルケン分子の熱反応に注目した。両者を200℃程度で加熱するとSi-C結合を形成して、Si基板表面に有機分子層を形成することが知られている。この反応を、金ナノ構造存在下で可視光照射によるプラズモン共鳴励起を行ったところ、Si-C結合の形成を確認することが赤外吸収分光により出来た。金ナノ粒子が無い場合には可視光照射を行っても反応が進行しないことから、プラズモン励起に伴う加熱で反応が進行することが確認された。多光子吸収の光反応ではないこと、C=C結合が無いと反応しないことも確かめられた。 次に、さらに高温のプラズモン局所加熱を実現する為に、金よりも融点の高い白金やパラジウムのナノ構造体を作成した。一般に、ナノ構造はバルク体よりも融点が下がるため、高融点の金属を用いることで1000℃を超える局所加熱の可能性が期待される。一方で、白金のプラズモン共鳴はあまり強くないことから、これまであまり研究されていなかった。そこで、本研究では様々な白金ナノ構造を構築し、そのプラズモン共鳴特性を測定し、さらに理論計算との比較も行った。その結果、ナノダイマー構造にすることで可視光に吸収極大を持つ白金ナノ構造の作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、局所加熱の実現可能性についての予備的検討として、金ナノ構造のプラズモン共鳴励起による熱反応の進行を調べた。その結果、プラズモン共鳴に一致する波長の可視光励起によって、200℃程度で進行する熱反応が進行する様子が確認された。 さらに研究計画に従って、高温のプラズモン局所加熱を実現する為に、金よりも融点の高い白金やパラジウムのナノ構造体の作成に成功し、そのプラズモン共鳴特性を調べた。 これらの結果、予定していた実験計画をほぼ実施し、予想される妥当な結果を得たといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、金のナノ構造のプラズモン加熱を利用して、Si基板上に有機分子層を形成可能であることが赤外分光法により確認された。しかし、赤外分光法は空間分解能がマイクロメートル以上あり、本手法の空間分解能を評価するには適さない。そこで、今後は原子間力顕微鏡AFMや探針増強型ラマン顕微鏡TERS等のナノメートル空間分解能を持つ走査型顕微鏡を用いて、局所加熱処理を施したSi表面の観察を行い、有機分子層が局所形成されていることを確認すると共に、本手法で達成可能な空間分解能について検討を行う。さらに、現在までに作成可能となった白金およびパラジウムのナノ構造体を用いて、より高温の局所加熱についても検討を開始する。SiC基板からのSi脱離によるグラフェン形成を実施例として、その可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。 次年度は、SiC基板の加熱による表面グラフェン化をモデル反応として利用するにあたって、標準試料の作成が不可欠である。このため、雰囲気制御可能な高温電気炉を導入する予定である。
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