研究課題/領域番号 |
24651128
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷垣 勝己 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (60305612)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 有機半導体 / M-I接合 / 発光トランジスタ / 両極性伝導 / 電子・ホール |
研究概要 |
大気中で安定に動作する両極性キャリヤ伝導が可能なFETをペンタセン有機半導体と金電極で達成できる事を示した。SiO2基板表面をBCBで改質して、その上に高品質のペンタセン薄膜を気相成長させ、この薄膜構造を制御する事により、金(Au)電極-半導体薄膜の接合が通常のショットキーリミットから、バーディーンリミットに変化できる事を実験で示した。このような方法で確証された方法を、ルブレン有機半導体に致して適用して、金電極から有効に両極性で電子とホールが注入でき、電子のホールの再結合により発光が生じる事を実証した。トップ電極/ボトムゲート型の有機FET構造において、有機半導体としてペンタセンを対象として用い、SiO2ゲート絶縁膜の表面を特殊高分子で保護したデバイスを作製して、Au-Au電極の場合とCa-Au電極に対して、初期的の実験をした。その結果、基本原理で記載したように、Ca-Au電極の場合はCa電極から電子(e-)が注入されAu電極からホール(h+)が半導体薄膜へ注入される事が判明した。Id-Vgトランスファー特性曲線の電子とホールの特性極性の交わる交点の高さから判断して、期待どおりどおりペンタセン単結晶薄膜に対してCa-Au電極で作成したFETが一番多くの同等の電子とホール電流を導入できている事がわかった。興味深い事は、Au-Au電極の場合、単結晶薄膜を用いた場合よりもSiO2表面をBCB高分子で保護して結晶成長させた多結晶薄膜の場合の方が格段に特性が良い事である。今後、界面状態と金属-半導体における接合状況を理解する実験を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機半導体には、電子とホールを同時に注入でき、n型のキャリア伝導とp型のキャリア伝導が単一結晶中で同時に起こる「両極性」の性質がある。これは無機半導体の一般的性質とは異なり、pn接合によるダイオードを作製せずに、単一結晶中で両キャリアの再結合が起こり発光する学術的にも応用的にも極めて興味深い現象であるが、高輝度で発光させるためには、一般には電極材料の制限から嫌気下条件が必要とされる。本研の目的は、絶縁体上の特殊な保護と有機薄膜の結晶成長を組み合わせ、金電極のみで効率の良い両極性キャリヤの注入ならびに伝達を可能とする方法論を提案することである。この手法が可能になると、大気下で高濃度キャリヤの注入再結合が可能であるので、将来発光トランジスタならびに有機半導体レーザー等への研究への大きな発展が期待できる。これまで得られている成果で述べたように、金属電極と有機半導体界面の制御により、接続状態をショットキーリミットからバーディンーリミットへ変換することに成功している。予定どおりの研究の進捗状況と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では有機半導体単結晶を使用せずに、SiO2ゲート絶縁体界面に特別な処理をして有機半導体薄膜を製膜する事で、金(Au)電極の場合でも大気中で発光に十分な電子とホールの注入と伝導を実現する方法を提案することに成功した。これは、有機単結晶ではなく、薄膜成長による有機半導体薄膜により、かつ金電極で単結晶FETに匹敵する両極性のキャリヤ注入と伝導が得られる可能性が実証できれば、学術的に興味深く応用の観点からも意義がある成果である。そこで、本研究成果を踏まえて、金属ー有機半導体界面の接続状態を詳細に制御する方法論を確立する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|