研究課題
有機半導体は、キャリア移動度という観点では、シリコンを中心とする無機半導体を凌駕することは難しいが、フレキシブルデバイスの実現、低コスト化、低温プロセスによる環境問題への貢献など、有機物の特色を生かした社会貢献が期待されている。また有機半導体には両極性伝導という無機半導体にはない魅力的な物性がある。有機半導体は特定のキャリアを持たない真性半導体であり、無機半導体とは異なりπバンド系で界面にキャリヤ捕捉準位が発生する傾向が少ないので、ゲート電圧制御を施す事により電極から電子(e-)とホール(h+)を同時に注入することができる。本研究では絶縁体上の特殊な保護と有機薄膜の結晶成長を組み合わせ、金電極のみで効率の良い両極性キャリヤの注入ならびに伝達を可能とする方法論を提案し研究を進めた。その結果、鎖状炭化水素化合物であるテトラコンタンをシリコン酸化物上に蒸着してその上に有機半導体であるルブレンを蒸着成膜したトランジスタデバイス構造においては、電極から半導体へのキャリヤ注入が金属-有機半導体界面でみられる通常のショットキー型からバーディン型に変化する現象を確認した。この現象を明確にするために、金、アルミニウム、カルシウムという仕事関数が異なる電極金属と酸化シリコンの表面修飾形態の変化を組み合わせた種々の実験を行った。その結果、実験の温度依存性により得られた障壁の大きさと実際に光電子分光により観測されたバンド構造から、金属ー半導体界面の接合を変化できる事実を解明した。 この事実は、無機半導体のようにpn接合を形成しなくとも、単一結晶中でキャリアの再結合ならびに発光を生じさせる事が可能であり、有機発光トランジスタにおいて効率よく発光のための両極性伝導を実現する事が金電極のみで可能なことを意味する高濃度のキャリヤを操作できれば有機半導体レーザ素子を通常の環境下で作製する事ができる可能性がある。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 82 ページ: 1-5
Physical Review B
Journal of Electronic Materials
巻: 42 ページ: 2025-2029
Journal of Materials Chemistry C
巻: 26 ページ: 4163-4170
10.1039/c3tc30220b
ournal of Physical Chemistry C
巻: 117 ページ: 1453-1456
10.1021/jp305823u
Journal of Physical Chemistry C
巻: 117 ページ: 8072-8078
10.1021/jp400646n