研究課題
本年度では、ヘテロドープしたナノグラフェン膜を、金属触媒を用いないでシリカ表面に形成し、そのナノグラフェン膜の特長的な電気化学特性を調べた。CVD法で均一なナノグラフェン膜を形成するためには、できるだけ低温で炭素形成を行うのが好ましいが、シリカ表面は炭素堆積に対する活性があまり高くない。メソポーラスシリカの表面にトリメチルシリル基を修飾すると、その熱分解で形成するシリコンラジカルの活性効果により、CVD炭素形成能が向上する。そこで、トリメチルシリル化したSBA-15に対して、窒素原子を含むアセトニトリルCVD(800℃)を行うことで、窒素ドープされたナノ炭素膜の作製を試みた。XPSの分析により、形成した炭素膜内に窒素原子の導入が確認された(N/C=0.054)。窒素ドープ炭素被覆SBA-15の硫酸水溶液中での電気二重層容量は窒素含有基によって疑似容量が形成され、非ドープのものより1.2倍増加した。更に窒素ドープによる酸化還元反応(ORR)活性の増幅も確認され、非ドープの電極と比較して1.6倍の高い還元電流を示した。以上により、高比表面積を持つ窒素ドープ炭素被覆メソポーラスシリカの作製に成功し、これらが電気二重層キャパシタや燃料電池用の白金フリー触媒として応用できることが示された。また、本手法は透明なシリカ材料表面に金属触媒を用いずにヘテロ原子をドープしたグラフェン膜を形成する技術としても有用である。今後は、ヘテロドープグラフェンの特長的な電気化学反応を利用したナノグラフェンデバイス(バイオセンサーなど)の開発へ展開できる。
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Carbon
巻: 65(1) ページ: 1-6