燃料電池など多くの電極触媒には貴金属が使用されている。資源量やコストの問題から触媒使用量を削減する必要がある。触媒の活性は,物質の電子状態や表面構造に大きく依存する。異種金属との合金触媒は,電子状態を変化させ単体にはない活性が出現することがあり,電極触媒として期待されている。しかし,バルク合金の場合,表面原子の元素組成や構造を制御することが困難である。そこで本研究では,触媒活性の高い合金組成を選び出し表面構造を制御できる表面合金層を形成させ,燃料電池反応に活性な新規合金積層化触媒とする。 Pt電極上にSnを修飾するとエタノール酸化反応が活性化することが知られている。この反応のさらなる活性化を目指してPtSn表面合金層の作成に取り組んだ。SnをPt(111)電極上に修飾し誘導加熱炉を用いて加熱すると,走査型トンネル顕微鏡により秩序構造を形成することが判明した。この秩序構造は,超高真空中で作成した既報の構造とは異なっていた。X線回折により構造解析を行なった結果,PtSn合金層は表面層のみに存在し,2層目以下には入り込んでいないことも分った。エタノール酸化反応を調べたところ,Pt(111)電極より2倍以上の活性であり,従来のSn修飾よりも耐久性が高いことが判明した。 酸素還元反応を高活性化する表面合金電極としてPtNi/Ni(111)合金層にも取り組んでいる。この系においてもPt単体よりも高活性化を示しており,今後詳細な表面構造の解明に取り組む予定である。
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