研究課題
増殖・転移の遅い段階の超早期腫瘍を、生体親和性の高い発光材料によって細胞レベルで高感度に検出する診断技術が求められている。本研究では、生体親和性および発光効率の高い無機/有機複合ナノ粒子を創製し、細胞レベルで腫瘍部位を特定するイメージング技術を研究した。その結果、生体親和性の高い色素分子の末端基を核形成場とした水酸アパタイト(又はチタニア)の結晶成長によって色素/無機ハイブリッドナノ粒子を創製する技術を世界で初めて見出した。クロロフィル/水酸アパタイトハイブリッドナノ粒子創製を例にとれば、クロロフィル色素 (Chl) の中心金属イオンを核形成場としたChl-アパタイト複合形成メカニズム (Chl-アパタイト間の静電相互作用とChl-Chl間の疎水性相互作用の微妙なバランス) を解明した。その知見によって、粒子成長と発光特性(励起波長、発光スペクトル形状、発光効率)を自在に制御する手法を見出した。さらに、ハイブリッドナノ粒子表面へがん細胞に対して特異的に結合・取込まれるリガンド分子を化学修飾する技術を確立した。化学修飾したナノ粒子は、生体毒性はなく、低エネルギー励起光(波長450 nm以上の長波長領域)によって可視光発光するため、生体組織の劣化を軽減できた。さらに、腫瘍部位(サイズ: 2 mm以下)へ生体毒性なく効率的に結合・取込まれ、蛍光顕微鏡によって容易に観察可能であった。以上により、本研究の生体親和性発光ナノ粒子創製によって「細胞にやさしく高い観察感度で微小な腫瘍を検出できる技術」を確立でき、非侵襲がん診断技術を確立した。今後、がんの超早期予防・診断医療技術への実用展開を行い、日本国の医療・バイオ分野へ貢献する。
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