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2013 年度 実施状況報告書

SPMを用いたグラフェンのナノポア加工

研究課題

研究課題/領域番号 24651141
研究機関大阪大学

研究代表者

田中 裕行  大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20314429)

キーワードグラフェン / ナノポア / SPM / 微細加工
研究概要

SPMを用いたグラフェンのナノポア加工をめざし様々な条件で、グラフェンを作成し、SPM観察を行った。SPMのポテンシャルを発揮するに相応しいグラフェンの作成から開始した。初年度では、グラファイト基板の上に金属ニッケルを蒸着・熱処理し、グラファイト上にニッケル(111)を成膜し、下地のグラファイトからニッケル層に固溶したカーボンが最表面(ニッケル層と真空の間)に析出させ、グラフェンを成膜させることに成功していた。
本年、微細加工技術で微小孔が作成されたシリコン基板上に独自に作成したグラフェンの転写がうまくできず、グラフェンの作成方法を変更した。グラファイトと同様に、原子的に平坦なSPM観察用基板として有名なマイカ基板上にNi(111)薄膜を作成した。超高真空SPMで作成した表面の形状観察を行ったところ、fcc(111)表面の特徴を有する表面形状像が得られた。基板上においてのアプローチポイントを数mmに渡り複数箇所の観察を行ったが、SPM観察が妨げられるほどのドメイン構造やその結晶粒界を露骨に残した構造は観察されなかった。次に、Ni(111)清浄表面の上に炭化水素ガスを暴露することでグラフェンを作成した。その試料表面のSPM観察より、fcc(111)表面特有の単原子ステップ構造に加えて、グラフェン特有の皺状の構造を確認することができ、グラフェンが成膜できたことが明らかになった。
本研究で得られたグラフェン基板は、in situで超高真空SPM用の基板に用いるだけではなく、ウェットプロセスなどを経て転写させればナノデバイスにおいても用いることが可能であり、今後の発展が期待される。
残念ながら、研究の最終目的は達成されてはいないが、他の研究者によって応用されるだけの価値のある成果と考えられるので、学会だけではなく、科学技術論文に投稿予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

小目的の「高品質で大きなグラフェンを作成すること。」はクリアしている。
最も高品質なグラフェンは、ニッケル単結晶の上にCVDで作成される。本研究では、ミリメーターオーダーの大面積の単結晶に比べるとドメインのサイズは10マイクロメーター程度と小さいが、高品質のグラフェンをグラファイト基板の上にNiを蒸着することによって、あるいは25年度の様に、マイカ基板上にNiを蒸着し、炭化水素ガスを暴露することで達成してきた。順調であったが、研究で使用している主要な装置は10年以上前に購入したものが殆どでメーカーの修理サポートが受けられないものも多い。実際、故障した放射温度計(ミノルタ社製)の代替品の購入に時間を費やした。
これだけでも学会発表だけではなく論文発表に値する成果といえる。既に、X線構造解析の研究者に測定してもらい「Ni膜は確かにエピタキシャル成長をしている。マイカ基板に成長させたことを考慮すると、Ni(111)ピークの2theta-thetaスキャンの半値全幅と配向性&結晶性を示すthetaスキャンの半値全幅より、結構高いクオリティと言える。」との評価をいただいている。最終的にはナノポアの領域(ローカル)が問題であるが、このような試料基板全体の情報による客観的な評価は相補的であるだけでなく、論文の質を保証する重要なデータといえる。
さらに、所属施設の微細加工装置のトレーニングも受け、自分で、転写先のシリコン基板を作成することができるようになった。遅れの原因となった装置の不具合が二度と発生しない保証はなく、「やや遅れている」のは否めないが、その分、間違いのない堅実に研究を進めていると評価している。

今後の研究の推進方策

25年度に、独自に開発したグラフェン(まず、マイカ基板上にNi(111)を成膜し、さらに超高真空下において、Ni(111)を清浄下・平坦化したのちにベンゼンの暴露によって成膜)を、微細加工技術によってSiN基板に作成したナノポアに転写する。なお、本段階では目的は未達成であるが、この時点で基板作成方法に関する科学技術論文を発表する(そのためにエフォートをさく)。
26年度(延長)は、ナノポア素子に転写されたグラフェンのSPMによるナノポア加工およびそれに必要なSPMの制御装置やナノポア形状のイオン電流測定装置の開発、得られた測定データ解析、さらにそれら最終成果の論文や学会発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
所属施設の微細加工装置を使用して自分で転写先のシリコン基板を作成することができるが、より成果をアピールできるアイデアを検討すべきなので微細加工技術に長けた研究者との共同研究も念頭にいれる。
また、研究計画を進めるための妨げとなる課題が出現した場合、最短時間で対応できるように様々な研究者との連携を視野に研究を遂行する。

次年度の研究費の使用計画

25年度に、独自に開発したグラフェン(まず、マイカ基板上にNi(111)を成膜し、さらに超高真空下において、Ni(111)を清浄下・平坦化したのちにベンゼンの暴露によって成膜)を、微細加工技術によってSiN基盤に作成したナノポアに転写する予定であったが、成膜の制御に必須な放射温度計が破損した(修理サポート終了品)。このため、想定外に研究が進まない状況が発生した。
26年度は、ナノポア素子に転写されたグラフェンのSPMによるナノポア加工およびそれに必要なSPMの制御装置やナノポア形状のイオン電流測定装置の開発、得られた測定データ解析、さらにそれら成果の論文や学会発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] STMに適したNi(111)及びグラフェン基板の作成2014

    • 著者名/発表者名
      田中裕行,谷口正輝
    • 学会等名
      第61回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      青山学院大学相模原キャンパス(神奈川県相模原市)
    • 年月日
      20140317-20140320
  • [学会発表] グラフェン基板上のDNA分子のSPM観察2013

    • 著者名/発表者名
      田中裕行
    • 学会等名
      第33回表面科学学術講演会
    • 発表場所
      つくば国際会議 〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-3
    • 年月日
      20131126-20131128
  • [学会発表] グラフェンに吸着したDNAのSTM/STS2013

    • 著者名/発表者名
      田中裕行
    • 学会等名
      第74回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      同志社大学京田辺キャンパス(京都府京田辺市多々羅都谷1-3)
    • 年月日
      20130916-20130918

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公開日: 2015-05-28  

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