研究課題/領域番号 |
24651143
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤井 稔 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00273798)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シリコン / ナノ結晶 / 不純物 / コロイド |
研究概要 |
コロイド状Siナノ結晶は、塗布法による大面積半導体薄膜の低コスト形成や蛍光バイオイメージング等の様々な分野への応用が期待されている。Siナノ結晶を水やアルコール等の極性溶媒中で安定させるためには、有機分子による表面修飾が不可欠であると考えられてきた。しかしながら、表面修飾分子が塗布膜の特性を劣化させる等の問題が指摘されている。本研究では、n型とp型の不純物を同時ドーピングするという原理的に全く新しい方法で、表面修飾無しで高い極性溶媒分散性を有するSiナノ結晶を開発する。同時スパッタリング法で作製したBとPを同時ドーピングしたSiナノ結晶を埋め込んだシリカ薄膜をフッ酸溶液でエッチングすることにより、同時ドープSiナノ結晶を溶液中に取り出し、その物性評価を行った。特に、BとPの濃度を系統的に変化させた試料について、溶液分散性の不純物濃度依存性を詳細に検討した。その結果、不純物をドーピングしないSiナノ結晶やBとPのいずれかのみをドーピングしたSiナノ結晶は、極性溶媒に全く分散せず、BとPを同時にドーピングしたSiナノ結晶のみが極性溶媒分散性を有することが明らかになった。また分散するナノ結晶の量が、不純物濃度に強く依存することを明らかにした。同時ドープSiナノ結晶の極性溶媒分散性の起源を明らかにするために、ナノ結晶をフッ酸水溶液中に分散した状態でフォトルミネッセンスの経時変化を調べた。発光測定結果と光電子分光法による評価の結果、同時ドープSiナノ結晶の表面には高B濃度層が形成されており、その負の表面電荷によるナノ結晶間の静電反発により高い極性溶媒分散性が保持されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進展している。本研究の目的は、n型とp型の不純物を同時ドーピングするという原理的に全く新しい方法で、表面修飾無しで高い極性溶媒分散性を有するSiナノ結晶を開発しようとするものであるが、本年度に実施した研究により、高い極性溶媒分散性を実現するための作製条件はほぼ明らかになった。また、極性溶媒分散性の起源解明に関しても、一般的な分析方法に加えて、Siナノ結晶をフッ酸溶液中でエッチングしながらフォトルミネッセンス測定を行い表面の構造について情報を得る、という方法を開発した。その結果、同時ドープSiナノ結晶表面に高B濃度層が形成されており、その負の表面電荷によるナノ結晶間の静電反発が高い極性溶媒分散性の起源であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、同時ドープコロイド状Siナノ結晶の高性能化、高機能化に向けて研究を行う。これまでは、直径3-5nm程度で、1.3eV付近に発光を示すSiナノ結晶について研究を行ってきた。今年度は、サイズおよび不純物濃度制御によりバンドギャップエネルギーをバルクSiのバンドギャップ以下の0.9eV程度から1.8eVまでの広い範囲にわたって制御する技術を開発する。さらに、Siナノ結晶の分散性の溶媒依存性(誘電率依存性)やPH依存性について研究を行う。特に、バイオイメージング応用を目指して表面修飾処理無しで水溶媒に分散するSiナノ結晶の開発を行う。また、ナノ結晶ソリッド形成の検討を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費で、試料作製に必要な材料の購入、真空装置の消耗品の購入、光学測定に必要な物品の購入を行う(約70万円)。また、国際会議における研究発表旅費(約30万円)や参加費(10万円)、研究補助の雇用(約10万円)に充てる。
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