研究課題/領域番号 |
24651143
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤井 稔 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00273798)
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キーワード | シリコン / ナノ結晶 / 不純物 / コロイド |
研究概要 |
コロイド状シリコンナノ結晶は、塗布法による大面積半導体薄膜の低コスト形成や蛍光バイオイメージング等の様々な分野への応用が期待されている。シリコンナノ結晶を水やアルコール等の極性溶媒中で安定させるためには、有機分子による表面修飾が不可欠であると考えられてきた。しかしながら、表面修飾分子が塗布膜の特性を劣化させる等の問題が指摘されている。本研究では、n型とp型の不純物を同時ドーピングするという原理的に全く新しい方法で、表面修飾無しで高い極性溶媒分散性を有するシリコンナノ結晶を開発する。 昨年度までに開発した同時スパッタリング法による不純物同時ドープ極性溶媒分散性シリコンナノ結晶作製技術をさらに発展させ、ナノ結晶のサイズを広範囲で制御する技術の開発を行った。ナノ結晶の成長温度を制御することにより平均直径を1nmから14nmまでの広範囲で制御する技術を確立した。このサイズ制御により、0.85eVから1.85eVまでの非常に広範囲にわたってナノ結晶コロイドの発光エネルギーを制御することが可能になった。この発光制御範囲は、これまでのナノ結晶のサイズによる発光制御に関する報告の中で最も広いものの一つである。さらに、発光エネルギー(サイズ)と、発光量子効率及び発光寿命の関係を明らかにした。 コロイド状シリコンナノ結晶のバイオ応用のためには、ナノ結晶が水に分散し水中で安定した発光を示す事が必要である。水中で安定して分散するシリコンナノ結晶作製技術の開発及びその評価を行った。作製した水溶媒シリコンナノ結晶コロイドは、非常に広いpHの範囲で安定した発光を示す事を示した。また、水中で光照射下においても発光効率の低下は非常に小さかった。以上の結果は、不純物同時ドープ極性溶媒分散性シリコンナノ結晶が、蛍光修飾等のバイオ応用に非常に適した材料であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進展している。昨年度開発した技術をさらに発展させ、非常に広範囲にわたるサイズ制御と発光エネルギー制御に成功した。また、水中に分散するシリコンナノ結晶を開発し、その特性を評価することにより、開発した材料が蛍光修飾等のバイオ応用に適していることを見出した。以上により、当初設定した(1)~(6)までの研究計画の(1)~(4)までをほぼ終了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、不純物同時ドープ極性溶媒分散性シリコンナノ結晶の電子デバイス応用を念頭に、ナノ結晶薄膜形成技術の開発とその光学的特性及び電気伝導特性の評価を行う。サイズの異なるナノ結晶から薄膜を形成し、ナノ結晶のサイズが薄膜の電気伝導特性に及ぼす影響を明らかにする。さらに、薄膜形成後の熱処理が薄膜の光学特性及び電気伝導特性に及ぼす影響を明らかにする。太陽電池への応用を念頭に、光電流特性の評価も行う予定である。 並行して、本プロジェクトの中心技術である「不純物同時ドーピングによる極性溶媒分散性ナノ結晶形成」の技術を、SiGe混晶ナノ結晶に展開する。SiGe混晶ナノ結晶では、サイズに加えて組成により特性を制御できることが期待でき、ナノ結晶コロイドの応用範囲をさらに拡大することが可能であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた海外出張を2014年4月に開催される2014 MRS spring meetingに変更した。実験装置の改修に必要な費用を次年度に持ち越した。 2014年4月に開催される2014 MRS spring meetingに2名が参加する。また、今年度に持ち越した装置の改修を実施する。
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