コロイド状シリコンナノ結晶は、塗布法による大面積半導体薄膜の低コスト形成や蛍光バイオイメージング等の様々な分野への応用が期待されている。シリコンナノ結晶を水やアルコール等の極性溶媒中で安定させるためには、有機分子による表面修飾が不可欠であると考えられてきた。しかしながら、表面修飾分子が塗布膜の特性を劣化させる等の問題が指摘されている。本研究では、ホウ素とリンを同時ドーピングするという原理的に全く新しい方法で、表面修飾無しで高い極性溶媒分散性を有するシリコンナノ結晶を開発する。 本年度は、以下の研究を実施した。1)これまでは同時ドープシリコンナノ結晶をスパッタリング法により作製してきたが、この方法では電子デバイスやバイオ分野での応用に必要な量を作製することが困難であった。hydrogen silsesquioxaneを原料とする真空プロセスを必要としない同時ドープシリコンナノ結晶の新しい大量生成方法を開発した。2)シリコンナノ結晶は可視領域の光吸収断面積が小さい。これは、太陽電池や蛍光バイオイメージングへの応用において大きい問題となる。この問題を解決するために、同時ドープシリコンゲルマニウム混晶ナノ結晶を開発し、光吸収断面積の増大を実証した。3)同時ドープシリコンナノ結晶の電子デバイス応用を念頭に、ナノ結晶薄膜形成技術の開発とその光学的特性及び電気伝導特性の評価を実施した。その結果、ナノ結晶薄膜ではナノ結晶間でエネルギー移動が起きていることを見出した。また、ナノ結晶薄膜の電気伝導特性は吸着分子による影響を強く受ける事を見出した。
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