研究課題/領域番号 |
24651144
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
笹井 亮 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60314051)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光-エネルギー変換 / 層状無機-有機複合系 / 半導体ナノシート / 光増感色素 |
研究概要 |
当該年度は、p型酸化物半導体の一つとして知られるコバルト酸リチウムを既報にしたがって剥離し、コバルト酸ナノシートコロイド水分散液を作製し、これと4価の陽イオン性ポルフィリン(フリーベース: TMPyP)を静電相互作用を利用した交互積層法により、これら二種類の物質が交互に積み重なった積層薄膜の合成を試みた。その結果、コバルト酸ナノシートを用いた場合であっても、これまでに報告のある金属酸化物ナノシートの系と同様に、交互積層膜が作製できることを明らかにできた。また、SPMおよび薄膜XRD測定により、コバルト酸ナノシートは1枚ずつ、TMPyP分子は単分子層で積層しており、目的通りナノオーダーで制定に制御された薄膜の作製に成功したことが明らかとなった。この膜の分光学的な評価を進めた結果、Soret帯のRed ShiftやTMPyP分子の顕著な発光消光が観測されたことから、TMPyPとコバルト酸ナノシート間で何らかの電子的な相互作用が存在することが予想された。これを確かめるために、この交互積層膜にMethylviologenを添加した状態で、TMPyPの光励起を行った。その結果、Methylviologenの光還元体のスペクトルが観測されたことから、本系においてTMPyPからコバルト酸ナノシートさらには、Metylviologenへの光誘起電子移動が起こっている可能性が高いことが明らかとなった。今後は、この現象の詳細を知るためにさらに詳細な検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の進捗計画を鑑みると、当該年度では、最低でも「コバルト酸ナノシート-ポルフィリン交互積層膜の作製」と「コバルト酸ナノシートとの間で光誘起電子移動を示す系」の構築の二つであった。本研究では当該年度にこれら二つの目標をひとまず達成することができた。一方で、いまだその光誘起電子移動の効率の向上や機構解明については、今後さらに進める必要のある課題である。このような目標の達成と、新たな課題の抽出に成功したことから、当該年度の研究はおおむね順調に進展したものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に実施した「コバルト酸ナノシート-TMPyP系」の光誘起電子移動反応の機構解明のために、光誘起電子移動反応の経時変化および過渡吸収/蛍光測定による解析を試みるとともに、コバルト酸ナノシートの電子構造とTMPyP、それぞれおよび複合膜における電子構造の解明を進める。また、高効率光誘起電子移動系実現のために (1)光増感色素種が与える影響の解明(中心金属の影響、アザポルフィリンの利用、フタロシアニンを用いた検討) (2)他のp型層状半導体として、光還元した酸化黒鉛ナノシートを用いた同様の検討 を進める予定である。 (1)については、上記のような検討に加えて、n型半導体ナノシートであるチタン酸ナノシートとのさらなる複合についても検討を進め、新しい高効率光-エネルギー変換系としてのコバルト酸ナノシート-TMPyP-チタン酸ナノシート複合積層膜系の構築をも目指す。 さらに(2)については、平成24年度に行ったことと同様に、まず交互積層膜の作製条件の確定を行うとともに、酸化黒鉛ナノシートの電子状態の解明と複合化する光増感色素とのエネルギー準位関係を明確にすることから始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の残額分については平成25年度に、コバルト酸ナノシートの電子構造解明のための測定、コバルト酸ナノシートとTMPyPとの間の光誘起電子移動反応の詳細解明のための過渡測定や光電流測定などのために必要な経費(依頼測定費、旅費、消耗品など)として支出予定である。
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