研究課題/領域番号 |
24651144
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
笹井 亮 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60314051)
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キーワード | 光ーエネルギー変換 / 層状無機ー有機複合系 / 半導体ナノシート / 光増感色素 |
研究概要 |
当該年度は平成24年度に引き続き、(1)コバルト酸ナノシート(CNS)-増感色素複合積層膜系について光化学的挙動の評価を進めるとともに、(2)金属ドープチタン酸ナノシート(M:TNS)ー増感色素複合積層膜系の作製および光化学的挙動評価を進めた。以下にそれぞれで得られた成果の概要を示す。 (1)CNSを介して陽イオン性ポルフィリン(TMPyP)とメチルビオロゲン(MV)を交互かつ精緻に積層した交互積層膜の作製に成功した。この膜に対して、偏光分光法を適用した結果、TMPyPは、上下のCNS層とそれぞれ2つのピリジニウム基で相互作用し、ポルフィリン平面を約70°ナノシート平面に対して傾けた配向構造で積層していることを明らかにした。このように膜構造を明らかにした交互積層膜について、真空中ならびに空気中での光化学的挙動を評価した。その結果、TMPyPを光励起した場合、雰囲気によらずTMPyP由来の光吸収の現象が観測され、光励起されたTMPyPから電子が移動することが明らかとなった。この励起電子の発生に伴い、空気中ではMV分子の一電子還元体由来のスペクトルが観測された。一方真空中では、MV分子の一電子還元反応は進行しなかった。通常、空気中などの水分野や酸素分子が存在する状況では、MVの一電子還元反応は進行しにくいことが知られているが、本系ではそれが顕著に進行することが明らかとなった。現在、この現象のメカニズムの解明にまい進しているところである。 (2)Tiサイトに3価金属であるRh、Fe、Alをドープしたチタン酸ナトリウムの合成を行った結果、RhおよびAlについてはドープすることができた。さらにこれらのナノシート化を用いて交互積層法によりTMPyPとの交互積層膜の作製も可能であった。この得られた膜について現在、光化学的挙動の解明に関する実験研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度までにコバルト酸ナノシート系については光化学的挙動の解明を目指しており、雰囲気が与える影響が予想と異なる結果となったため、現在その原因を探っているところではあるが、空気中で十分扱えることとなる点を考慮すると、おおむね予定通りの進捗状況であると判断できる。また加えて、コバルト酸ナノシート系だけにとどまらず新しい系としてチタン酸系のp型化にも取り組み始め、コバルト酸系に追いつく勢いで研究が進んでいる点は大きな進捗といえる。このように目標の達成のみならず新しい取り組みも順調に進んでいる点から、おおむね順調に進んでいるものと自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の最終年度となる平成26年度は、p型半導体ナノシートとイオン性ポルフィリンからなる交互積層膜の光化学的挙動の解明を早期に完遂させるとともに、本研究課題のもっとも大きな目標であるp型半導体ナノシートとn型半導体ナノシートとをイオン性ポルフィリンを介して交互に積層したヘテロ積層膜の創製と、その光ーエネルギー変換系としての可能性の解明に関する研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
コバルト酸ナノシートとTMPyPからなる交互積層膜の光化学的挙動が、当初の作業仮説とは異なる傾向を示した(雰囲気の影響)ため、光化学的挙動の詳細解明のための過渡吸収・蛍光測定や光電流測定のための依頼測定に供する試料の作製に手間取り、本年度そのために計上していた依頼測定日、旅費、消耗品などの支出が行えなかったため 当該年度の残額分については平成26年度に、コバルト酸ナノシート、金属ドープチタン酸ナノシートの電子構造および光照射下での電子構造の解明のための測定、TMPyPと半導体ナノシート間での光ーエネルギー変換実現のために必要な測定等のための経費(依頼測定費、旅費、消耗品など)として支出予定である。
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