従来の有機薄膜太陽電池では発電できない長波長光の利用が可能である表面修飾シリコン量子ドットをp型半導体/n型半導体バルクヘテロ接合活性層に導入することにより、量子増感効果による有機薄膜太陽電池の光電変換効率が増大する可能性について検討し、以下の成果を得た。①低温プラズマ装置を用いてシリコンナノ粒子のアルゴンプラズマ処理により、プラズマ処理時間に伴って粒子径が減少することを確認し、ドット径制御の可能性を明らかにした。②窒素プラズマ処理により、プラズマ処理前にドット表面に形成していたSi-H基およびSi-OH基が消失し、SiN-H基が新たに形成することを明らかにした。③表面にSi-Cl基を形成させたシリコン量子ドット(ドット径:4~5nm)をP3HT/PCBM活性層に導入して薄膜X線回折測定を行った結果、シリコン量子ドットはP3HT及びPCBMの結晶化に対して不均一核として作用し、両者の結晶性を高めることを明らかにした。活性層をPEDOT・PSS正孔輸送層とTiOx電子輸送層で挟んだ太陽電池セルにおいて、シリコン量子ドット導入に伴い720nm付近のIPCE値が増加したことより、シリコン量子ドットの増感作用発現を確認できた。したがってP3HT/Si/PCBMにおいてエネルギーカスケードが形成され、シリコン量子ドットの光励起により生成した正孔・電子はそれぞれP3HT結晶相・PCBM結晶相に移動することが明らかになった。したがって、シリコン量子ドットはP3HT/PCBM界面に配置していると推測される。活性層の蛍光スペクトル(励起波長550nm)測定の結果より、シリコン量子ドット導入に起因してP3HT結晶相サイズが増加することで650nm付近の蛍光強度の増加をもたらし、P3HTの光励起により生成するエキシトンの中で発電に寄与できない割合が増加することを明らかにした。
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