研究課題/領域番号 |
24651148
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
渡邊 賢司 独立行政法人物質・材料研究機構, 光・電子材料ユニット, 主幹研究員 (20343840)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 結晶成長 / 六方晶窒化ホウ素 / 原子層物理 / 電子デバイス / 不純物ドーピング / ラマン散乱分光法 |
研究概要 |
六方晶窒化ホウ素(hBN)は高融点材料(融点3000°C以上)であるが、ある種の原子が表面よりhBN原子層に容易に取り込まれる結果、強固な結合を持つホウ素原子と窒素原子からなるsp2結合に影響を与えることが示唆される。本研究では原子層への接触拡散による取り込みを系統的に実証、解明することにより、hBN原子層への機能賦与の指針を得る。平成24年度は、主に昇温過程での原子層の接触反応の様子を共焦点ラマン散乱分光装置で直接観察するために、観察用高温炉を導入した。この高温炉は1500℃まで顕微鏡観察のもとにラマン分光が可能であり、雰囲気ガスも制御できる。hBNの許容ラマン散乱モードは、高振動数のE2gモードと低振動数のE2gモードの二つである。このうち、高振動数モードの乱れは層内すなわち窒素とホウ素原子のsp2結合の異常を表し、低振動数モードによりこの物質の層間秩序の乱れがわかる。特に低振動数モードの観測のためには、特別な分光系を構築する必要があるが、既存の共焦点ラマン散乱分光装置を整備して測定を行った。常温では、二つのE2gモードは特に問題なく観測可能であることを確認した。また低振動数モードでは窒素や酸素分子に由来する回転振動モードが顕著に観測されるのでこれらを除去するためにアルゴンガス雰囲気での測定が効果的であることを見いだした。現在高温状態でこれらのラマンモードの振る舞いを調べているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験で最も重要な格子振動モードはE2g低振動数モードであるが、結晶性および温度上昇に由来するブロードニングおよび高温での熱輻射の影響があり測定が非常に困難である。また、顕微ラマン装置の不具合により精密電動ステージが不安定で試料位置を安定よく保つことが出来ないことも実験をさらに困難にしている。
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今後の研究の推進方策 |
進行状況に記述したようなE2gモードを観測するための困難を克服するためにつぎのような方針で研究を進めていく。まず結晶性に由来するラマンモードのブロードニングを極力おさえるために、高温高圧下により温度差法で育成した単結晶を吟味して測定に採用する。また、温度上昇による熱輻射は分光器に入射して迷光成分となるため、分光器前に近赤外カットフィルターを設置し、より確度の高い測定を試みる。つぎに現在精密電動ステージをメンテナンスしており、最低限測定時間の間はレーザスポットの回折限界以内に試料を保持できるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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