研究課題
本年度は昨年度に構築した共焦点ラマン散乱分光装置を用いた結晶状態の直接観察システムにより高圧法による六方晶窒化ホウ素単結晶の高温領域における各振動モードの温度依存性を1500℃までの高温領域まで詳細に調べた。さらにそのデータを基礎に、グラファイトを接触させたときのグラファイト自身および六方晶窒化ホウ素の各振動モードの振る舞いを詳細に調べた。六方晶窒化ホウ素の格子振動モードのうちラマン活性であるE2gモードはアルゴン雰囲気中では1500℃まで安定であることが確認され、格子振動モードの非線形性に由来するピークシフトおよび半値幅の増大が観測された。また、六方晶窒化ホウ素原子層膜の酸化安定性を調べた。空気中にさらされた六方晶窒化ホウ素原子層膜(1-4原子層)の温度を上げていき原子間力顕微鏡(AFM)とラマン分光法で観察したところ、850℃まで単原子層状態を保つことがわかった。この温度領域からわずかな酸素ドープ(酸化)がエッチングラインとして観測された。このように単層六方晶窒化ホウ素は比較的高温でも安定であることがわかった。高温条件下における酸化に対する安定性は将来的にグラフェンを高温環境対応デバイスへの応用に際して重要である。一方、六方晶窒化ホウ素にグラファイトを接触させ、アルゴン雰囲気中でラマン散乱を調べてみると、約400℃以上の温度領域でピーク強度に異常が見られる。また、この領域でグラファイトの半値幅にも特異な振る舞いがみられた。このような振る舞いは六方晶窒化ホウ素とグラファイトのなんらかの相互作用によるものと考えられ、今後さらに詳細な実験検証が望まれる。
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