研究課題/領域番号 |
24651151
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
真柳 浩太 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50418571)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / ナノバイオ / 可視化 / 生物物理 / 蛋白質 / DNA / 分子標識 / 画像解析 |
研究概要 |
電子顕微鏡は、結晶構造解析のみでは解析が困難な巨大な超分子複合体の立体構造を解析する手段として大変に有効である。得られた複合体の構造中の個々の因子の位置は、適当なラベル(標識)を、対象とする因子に付加することで可視化することができる。本研究では、生物学研究の上で非常に重要なDNA結合蛋白質から構成される複合体中の、DNAの新規標識技術の開発を行う。DNAの末端標識法の開発として、DNAの高次構造を利用した方法を試みた。 これまで利用していたストレプトアビジンによる標識はストレプトアビジンが4量体を形成し、全体で分子量6万近くにもなることから、単粒子解析で得られる分解能を考慮すると必要以上に大きいことが問題であった。ストレプトアビジンより小さいDNAの高次構造体を形成する配列を、目的とする複合体中のDNAの末端に付加することで、より精密に位置を可視化できる標識の開発を試みた。GGAトリプレットが8回繰り返した(24塩基)DNA配列は球状のDNA高次構造を形成することがNMRによって確かめられており、先ずはこれを10bpのDNA2重鎖の両端につなげたアレイ状DNAを作成し、電子顕微鏡にて観察した。その結果、予想されるアレイ状構造を明確に確認することができた。また構造データバンクに登録されているこのDNA構造体の原子モデルから計算機によって2次元投影像を計算し、上記構造と比較したところ、アレイの球状部分の大きさと極めて良く一致したことから、電子顕微鏡の観察下の溶液条件で確かにDNAナノ構造体が形成していること、且つそれが電子顕微鏡で十分可視化可能であることが明らかになった。本構造体をDNA2重鎖の片側に付加したものを DNAの回りに3量体リングを形成するPCNAと混合した結果、リングの片側のみに高次構造に相当する密度が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りGGAトリプレットリピートによるDNA高次構造の形成及びその可視化を電子顕微鏡にて確認することができた。またテストサンプルとしてPCNAリングとDNAの複合体の系に同標識を利用することで、ほぼ設計通りに高次構造部分が可視化できることが確認できた。また従来のストレプトアビジンより精密に位置を確定できる事が分かった。同方法が複合体の標識に活用できる可能性が極めて高い事を示せており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに試みた標識法を他の複合体の系にも使用して、DNA末端の標識を試みる。その際、これまでに既に構造解析を行い、構造が既知の試料にも使用して、有効性を確認すると共に、位置情報の向上を図り、これまでの解析よりどのぐらい改善されるかを調べる。また構造未知の試料に使用する事で、DNAの末端領域の確定等、新規構造情報の獲得を試みる。 またテロメアDNA配列やDNAテトラヘドロン等、他の構造体の有効性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
超微量試料用分光光度計を購入予定である。また試薬・試料保存用冷蔵・冷凍庫を購入する予定である。
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