研究課題
電子顕微鏡は、結晶構造解析のみでは解析が困難な巨大な超分子複合体の立体構造を解析する手段として大変に有効である。得られた複合体の構造中の個々の因子の位置は、適当なラベル(標識)を、対象とする因子に付加することで可視化することができる。本研究では、生物学研究の上で非常に重要なDNA結合蛋白質から構成される複合体中の、DNAの新規標識技術の開発を行う。DNAの末端標識法の開発として、DNAの高次構造を利用した方法を試みた。これまで利用していたストレプトアビジンによる標識はストレプトアビジンが4量体を形成し、全体で分子量6万近くにもなることから、単粒子解析で得られる分解能を考慮すると必要以上に大きいことが問題であった。本年度は、標識自体の大きさは前年度の繰り返し配列を用いた構造体程小さくはないものの、形状を利用して、従来の標識よりもピンポイントで位置を同定できる標識法に取り組んだ。構造体として、1辺20塩基対の正4面体構造をもつDNAナノ構造体DNA tetrahedronを利用した。合成オリゴDNAを混合、再構成した構造体をゲル濾過によって精製して電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、ゲル濾過の過程は極めて重要であることが分かった。単粒子解析によりこの構造体の電顕画像より立体構造を解析したところ、正四面体構造の形成を確認できた。この構造体は各辺にニックが存在する設計になっているが、標識として用いる際には、頂点からDNA二重鎖を伸ばすため、ニックの一つが頂点に存在する構造体を作成する必要がある。単粒子解析の結果、一つの頂点にニックがある構造体の形成を確認することができた。更に頂点からDNA2重鎖を伸長した構造体の正四面体形成も同様に確認でき、平均像で頂点から伸展させたDNA2重鎖を可視化することに成功した。
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Nucleic Acids Research
巻: 42 ページ: 1644-1655
10.1093/nar/gkt1124