研究課題/領域番号 |
24651152
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
水谷 文雄 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (80118603)
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研究分担者 |
安川 智之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (40361167)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 結合力 / 誘電泳動 / ナノバイオテクノロジー / 抗原抗体反応 |
研究概要 |
本研究では抗原抗体反応などピコ~ナノニュートン単位の生体分子の結合力測定のための新手法を提案することを目的としている。まず誘電泳動力を利用して微小電極も目的位置に細胞を誘導し,電極上に固定化する。次に誘電泳動力を反転させ,固定化細胞に斥力を加える。細胞が引き離される時の誘電泳動力から結合力を計測する。本法は電極セルと交流電源だけで測定が可能で,数百個レベルの細胞を一括に測定可能で統計処理がしやすいという特徴がある。 本年度は,微粒子の配列,固定化など実施計画記載の予備実験がほぼ順調に進捗したことを受けてHL60細胞を対象として,細胞表面に発現したCD33と,電極基板表面に固定化した抗CD33抗体との結合力の測定を行うことを目的として以下の研究を行った。 細胞の非特異吸着を抑制するために,特異吸着抑制効果があるオリゴエチレングリコールをリンカーとして抗体を基板と化学結合させ,さらに抗体結合部位以外もオリゴエチレングリコールで被覆した。抗体として抗グロブリン抗体を用いたネガティブコントロール実験の結果から,この基板電極修飾法によりHL60細胞の非特異吸着が十分,抑制できることが分かった。 抗CD33抗体を修飾した基板電極上に正の誘電泳動によりHL60細胞を集積,固定化させ,次いで負の誘電泳動条件で印加電圧を少しずつ増加させながら電極上に残存する細胞数をカウントした。この結果,結合していたHL60細胞からの脱離数/電圧のグラフに二つの顕著なピークが出現した。低電圧側のピークは基板/細胞間で一か所での抗原抗体反応により固定化されていた細胞の脱離によるもの,その二倍の電圧でのピークは二か所での抗原抗体反応により固定化されていた細胞の脱離によるものと推測され,現在,結合力を算定すべくデータの解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は微粒子をモデルとして,周波数を変化させて異なる配列パターンの作製,作製時の非特異吸着の抑制等の実験を進めていたが,十分な成果を得たことから,より非特異吸着の抑制が困難で配列速度も小さいという問題のある一方で,得られる情報として意義がはるかに大きい細胞の使用(細胞は当初,25年度で使用すると予定していた)に踏み込み,予備的ではあるが,十分に基板/細胞間の免疫結合力が測定し得るという実験結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は電場シミュレーションを精緻に行って,24年度に得られた結果をもとに結合力を算出するとともに,基板上の抗体の結合密度を変化させて脱離挙動を検討することにより,密度/結合サイト数の関係から一か所の結合による結合力の信頼できるデータを取得する。さらに抗体修飾微粒子について同様の検討を行い,一方で,原子間力顕微鏡を用いた測定により,本法で得られた結果の信頼性を確認する。 以上の研究結果により,修飾基板電極を用いた誘電泳動法を結合力を求めるツールとして確立したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。 物品費は誘電泳動デバイスの作製,細胞培養等,本実験の遂行に必要不可欠な実験操作に用いる機材,試薬などの購入に充てる。旅費は成果発表,原子間力顕微鏡測定に関する打ち合わせ等に充てる。人件費・謝金はデバイス作製,ルーチン測定等を行う補助員の雇用等に充てる。その他は学会参加,論文投稿等の費用に充てる。 以上のように本研究の遂行,および得られた成果の発表のための必要最小限の費用を予算として計上しており,その予算に沿って使用していく予定である。
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